アコヤ真珠の一部に赤紫色を有する真珠層が存在し,それが反射分光スペクトル上370nm,500nmに固有の吸収を持つことは1990年の当学会総会で発表した.その後同種の現象が一部のシロチョウ真珠にもみられることを全国宝石学協会機関紙「GEMMOLOGY」(2004年8月号)で紹介した.今回一部のクロチョウ真珠にも同種の現象があることを見い出した.
これらの現象が貝殻外層の稜柱層含有色素が起因であり,成分はポルフィリン類が関与していること,真珠袋を構成する外面上皮細胞の何らかの分泌異常が関与していることを推定した.また蛍光分光測定法や紫外線ライトによる蛍光検査などでもこの色素が確認でき,簡易鑑別法として利用できることが確認できた.