抄録
奈良県天川村五代松鉱山は石灰岩と花崗岩体の境界にできた接触交代鉱床であり、形態的に特色のある水晶が多数産出している。我々はトラピッチェ・クオーツの産出を報告しているが、近年、その鉱体の延長に当たる場所から黄色不透明の先細り水晶(径数mm、長さ数cm)が採取された。その形態とトラピッチェ・クオーツとの関連について述べる。
先細り水晶の表面は著しく凹凸で、空隙も多く、微結晶の集積により成長した形状を示している。内部のCL像では下部に平面で囲まれた累帯構造が見られるが、上部では不鮮明になり、先端が分裂した形状になる。
外形とCL像から、facet成長 → セル成長 → 付着成長の履歴がわかる。トラピッチェ・クオーツの内部にも先細り状の累帯構造と多くの空隙があることから、この先細り水晶はトラピッチェ・クオーツのコア結晶の特徴を示していると考えることができる。