抄録
LIBS(レーザー誘導ブレークダウン分光法)は 試料の下処理が不要で迅速な分析が出来, ほぼすべての元素を検出することが可能なことから探鉱やライン設備だけでなく惑星探査 にまで採用されている。2006 年に全国宝石学 協会が導入したLIBS2000+システムでは主に 拡散加熱処理コランダムの識別に使用されて いたが定性分析が主であった。近年精度や安 定性と操作性が大きく向上しており金属・鉄鋼 業界や犯罪捜査では各種元素の定量分析も行われている。そこで Applied Spectra 製の LA-LIBS システムを導入し旧来の用途以外に 宝石鑑別の現場でどこまで応用が可能かを検 証した。不活性ガスの導入も旧機種はアルゴ ンガスのみ使用可能だったがヘリウムガスも使 用可能になりパージするガスの種類と結果の 関係についても検討した。
旧来から行われていた拡散加熱処理が施されたコランダムの分析では旧機種に比較して Beの信号強度は大幅に向上していた。また旧 機種では不明瞭なピークしか認められなかった微量の Cr,V,Fe 起源のピークは明瞭になり近接するピークとも容易に分離可能である。 またコランダムに微量含有される Mg は蛍光X 線分析では検出限界を下回っていたがLIBS分析では強いピークが確認された。Be に関し ては 1ppm を下回るものまで検出可能なことが 知られており拡散加熱処理の施されたコラン ダムの鑑別には有効である。
レーザーエネルギーの精密なコントロールとスポットサイズの変更が不可能だった旧機種ではコランダム以外には応用されていなかった が本研究ではコランダム以外の宝石種についても試行した。その結果,スポットサイズの拡 大やレーザーエネルギーの低減により試料に 与えるダメージや分析痕の調整が可能となり コランダムよりも硬度の低いより脆い素材でも 安定した結果が得られた。
定量分析はNISTやUSGSの標準試料を用いて検量線を作成する手法が公表されている。 本研究では拡散加熱処理が施されたコランダ ム中の Be の定量分析を試行した。比較的濃 度の近い NIST-610 と 612 を用いて検量線を作成し得られたデータを評価した。
PCA 分析と呼ばれる手法がLIBSシステムで 使用されており既に紛争地域で産出した希少金属資源や金属材料の産地判別などで実績 が報告されている。この手法を用いた各種宝 石の原産地鑑別の可能性について報告する。