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はじめに
スピネル(MgAl2O4)は、立方晶の無色透明な結晶である。この結晶に不純物として Mn を少量添加したものは、様々な色を呈し、緑色の蛍光を発するなどの特徴を持つことがわかっている。また、スピネル結晶は、融点付近に広い固溶領域を持つ固溶体であり、 Mg 不足組成のスピネルでは、光吸収スペクトルや発光スペクトルが組成によって変化することが知られている。今回は、 Mg 不足組成から Mg 過剰組成までの広い範囲で組成を変えて育成した Mn 添加スピネル結晶について、光学特性評価を行い組成の影響を検討した。
実験
純度 99.99 %の MgO、 Al2O3 および、 99.9 %の MnO を原料試薬として用いて、組成式(MgxAl2O3+x)で、 x=0.2~ 1.7 になるように混合し、 FZ 法(浮遊帯域溶融法)を用いて結晶を育成した。育成した結晶を切断加工し、 X 線粉末回折パターン、光吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。
結果
育成した Mn 添加スピネル結晶の光吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルには、原料組成の影響による変化がみられた。特に、酸素を含む雰囲気ガス中で結晶を育成した場合に組成の影響が強く観察できた。光学特性の原料組成による変化は、 Mg 過剰組成と Mg 不足組成の場合では少し異なっていた。
Mg 不足組成の原料から育成した結晶では、 x=0.3 までは、スピネル結晶の回折ピークのみが観察され、スピネル相の結晶が育成できていることがわかった。一方、図1に示したように、 Mg 過剰組成の原料から育成した結晶の X 線回折パターンには、 MgO 結晶の回折ピークが見られ、組成xの増加とともに回折ピーク強度が増加した。 Mg 過剰組成から育成した結晶では、結晶育成後に MgO 結晶が析出するため、原料組成の影響が現れにくいのではないかと予想される。