宝石学会(日本)講演会要旨
平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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平成30年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
紫水晶とシトリンの色の起源について
*荻原 成騎
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p. 12

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抄録

紫水晶やシトリンの色についての研究は、数百年も遡ることができる人類の古い興味である。これら鉱物の着色が微量の鉄に起因することはよく知られる所であるが、具体的な鉄イオン濃度と色の関係についてのデータは、現在でも明らかにされていない。そもそも、着色に関与している鉄濃度は、どの程度濃度なのか。諸説あるが、研究ごとに桁違いの値が提唱されている。また、鉄のイオン化状態の差異についての議論は定性的な議論であり、各鉄イオン量の定量的な議論はなされていない。各鉱物の色についての記載は、濃い/淡いなどという感覚的表現で分類されている研究が多く、分光分析によって波長とその強度の評価を定量的に行う必要がある。

本研究の目的は、紫水晶とシトリンについて、色の起源と考えられている全鉄、各鉄イオンの種類と濃度の関係を明らかにすることである。今回の発表では、研究の第一歩として、各鉱物の色情報を分光スペクトルの curve fitting(ピーク分離)によって求め、種々の処理によって色を変化させた処理石との比較を行った。すなわち、色付水晶の色変化の記載を分光スペクトルのピーク分離によって行った。

分析には、ブラジル産紫水晶、ザンビア産シトリン、ボリビア産アメトリン及びブラジル産プラシオライトを用いた。試料は、 c-軸垂直方向に厚さ 2.2mm で切り出し、両面研磨を行った。 EPMA 分析で微量元素組成を測定した後、紫外線照射(ピーク波長 352nm)、加熱処理、 γ 線照射によって色を変化させた試料について分光分析を行ない、解析結果を比較した。紫外線照射 100 時間、 200 時間 400 時間、加熱温度 350℃、 400℃、 450℃、 500℃で処理した。

分光分析には、 JASCO 社製 V-650 紫外可視光分光高度計を改造し、両面研磨薄片試料の微小領域(直径2mmの円)について分光分析を行った。分光分析の結果についてピーク分離処理を行い、着色に寄与している波長とその強度を決定する。

分光スペクトルの解析方法について。以下にブラジル産紫水晶の分光分析結果(例)を示す。分光スペクトルの curve fitting により、スペクトルを構成するピークを洗い出した。主要吸収ピークは 350nm、 408nm、 533nm の三本と長波長側に数本のピークが見られる。紫水晶の吸収スペクトルは、主要三本のピーク面積で特徴付けることができる。各処理前後の色変化を、三本のピークそれぞれの面積比変化で表し、処理による変化を比較検討する。

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