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ラベンダー・ジェダイトについてはPinkish Lavenderと表現されるものも報告されているが(Lu, 2012)、主たる色がピンクの天然のジェダイトについての報告は少ない。天然のピンク・ジェダイトと思われるものを検査する機会を得たので、その宝石学的特徴やマンガンによる色について報告したい。
10年ほど前にミャンマー産という、上記の写真のような円盤状のルース(現地名:壁)3点、カボションカット6点のピンク・ジェダイトを入手することが出来た。ピンクのジェダイトには有色樹脂によって着色されたものも多く流通し、当該石についても同様の処理が疑われた。しかし、着色の特徴となるような、色素の色溜まりや鮮やかなオレンジの蛍光はなく、蛍光もラベンダー・ジェダイトで見られる微かなオレンジものもだけだった。
また、FT-IRの透過検査でもジェダイトの着色にしばしば用いられる樹脂による吸収は見られず、ワックスの吸収があるか、それすら見られないものであった。
紫外可視分光スペクトルでも、着色による500~550nmの強い吸収は見られず、 540nm前後をピークとする弱い吸収が見られたのみだった。ラベンダー・ジェダイトでは同様のピークが 570nm付近がピークであり、ピーク波長は異なるが、似たような吸収が確認された。
ピンク・ジェダイトといっても白い脈の部分もあり、白色部分とピンク部分の微量元素を比較したところ、蛍光 X線成分分析では主だった差は確認されなかった。しかし、 ICP-MSでさらに微量な成分を調べると、ピンク部分からは 20~40ppmの Mnが検出されたが、白色部分では 5ppm以下であった。その他にもラベンダー・ジェダイトとの比較では Feが少ない傾向が見られた。このため、ピンク色は微量なMnによるものでかつ Feが少ないことによるものと考えられた。