宝石学会(日本)講演会要旨
2023年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
会議情報

2023年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
Lotus Colors 社による照射ダイヤモンドの特徴及び比較研究
*阿依 アヒマディ
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 17

詳細
抄録

大粒の天然カラーダイヤモンドの稀少性と非常に高値であるため、一般消費者に買えるようなものではないことが現実的です。そこでダイヤモンドのエンハンスメントを重視する業者が 1990 年代初期に現れ、安全かつ確実な処理法により、大変美しく多様な色のダイヤモンドを作り始めました。

1993 年に設立したアメリカのニューヨークに拠点にある Lotus Colors 社と Briza Color Diamond 社がカラーエンハンスメント企業として、独自の照射と高温高圧(HPHT)の技術からほぼ無色の天然ダイヤモンドをベースにし、様々な鮮やかなカラーダイヤモンドへ変化させ、世界宝石市場へ提供するようになりました。

当社の技術研究者らは数年かけて膨大なダイヤモンドを研究し、線形加速器を用いてダイヤモンドにパルス状の低エネルギーの電子ビームを与え、ダイヤモンド自身の電子に乱れを起こし、ほかの原子に捕獲されることによって、光の吸収構造が変化し、本来の色に変化が生じさせました。ダイヤモンドに電子線に晒されると、緑がかかった青色になりますが、ほかの色を形成するためには、無酸素条件下で電子線照射を続け、 450℃以上の極端な温度で加熱し、焼きなまし(アニール)が行われます。このアニールプロセスにより、ダイヤモンドの原子構造が再配列され、様々な新しい色が得られます。このようなプロセスは地下環境でも起りえる自然加熱プロセルを模倣したもので、陽子や中性子のような強力な照射処理が避けられています。

高温高圧法は、地球深部のマントルの自然条件を正確に模倣した処理プロセスであり、この手法により天然ダイヤモンド内に含まれる微量元素が高温高圧によって解放され、自然な原色である無色、黄色、緑色、オレンジなどが現れます。当社は、この照射と HPHT 法を組み合わせ、 baby pink, rose pink, purple のようなダイヤモンドを数量限定で作れるように成功しています。

本研究では、異なるタイプのダイヤモンド原石とカット石を選定し、両社に依頼し、その得られた処理結果を、可視-紫外領域分光、赤外線分光、 PL 分光分析法で検証しました。

著者関連情報
© 2023 宝石学会(日本)
前の記事 次の記事
feedback
Top