p. 4
群馬県南牧村の三ッ岩岳は水晶の日本式双晶の産地として有名であるが、 2013 年頃、新たにアメシストの産出が明らかになった。しかし、最近まで、その産状は不明のままであった。ここでは現地調査と採集者の証言をもとに、産出鉱物とその産状を報告する。
三ッ岩岳は秩父帯ジュラ系の地層から構成され、砂岩泥岩層と共に緑色片岩、結晶質石灰岩、チャートが分布している。その周辺は三波川変成帯に属しており、低温高圧型の変成作用を受けている。
現在、産出地の露頭は切り開かれた堀跡になっていて、その中央部に結晶質石灰岩(大理石)が露出している。その大理石と周囲の緑色片岩・砂岩泥岩層の間に黒い土で充填された脈があり、その中に大小さまざまな晶洞が 20 個程度あった。個々の晶洞の大きさは10~最大数十 cm に達した。晶洞の外殻は微小な水晶の集合体で構成され、その内部にアメシストとインクルージョンを含む白色~緑色の水晶が形成されている。
この地で産出する鉱物は主に水晶であり、それらは大きく、次の4種類に分けられる。
1)アメシスト様不透明水晶
2)透明なアメシスト
3)インクルージョンにより白~緑色を呈する不透明水晶
4)晶洞の外殻を構成する無色~白色の微小な水晶
なお、水晶以外の鉱物として、黄鉄鉱(武石を含む)、方解石、褐鉄鉱が得られている。
産状から推測される形成過程は次の通りである。岩石中の空洞に微小水晶が急速に形成された後、その内側でインクルージョン含有水晶とアメシストが成長した。さらに同時期または成長後期に母岩が粘土化した。