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栃木県日光市北部の日光国立公園内の男体山北方は古くからゼオライトの産地として知られており共生する形でシリカ鉱物が産する。過去の報告ではカルセドニーと記載されているが乳白色半透明の晶洞が多数あることからオパールの存在が示唆された。また、当地は5万分の一地質図幅(川田 1956)や岩相分布図表等(山崎 1958, 河野・竹下 2014)が刊行されているが、現状の岩相分布と乖離が認められたため詳細な地質調査を行った。本研究では現地の地表踏査により詳細な地質図を作成し、岩相分布を明確にする事で胚胎する母岩の属性を明らかにするとともに、オパールを含むシリカ鉱物の詳細な記載を行った。
シリカ鉱物は帯青灰黒色の SiO2 含有量;51-53wt%の玄武岩-玄武岩質安山岩中に 2-3cm の脈や晶洞として産する。過去に御沢溶岩から産するとの記載があるが御沢溶岩は優白色のデイサイト (SiO2;64-70wt%)であり分布域も異なることが判明した。この岩体は太郎山南麓のおよそ 500m 四方に分布し、太郎山溶岩の下位に位置する。この溶岩最上部にはアグルチネートが見られる。
偏光顕微鏡下において、母岩はかんらん石、両輝石と斜長石の斑晶がみられ、細粒の斜長石や輝石を含む石基からなり、流理は殆ど見られない。光学的等方体の鉱物が充填された杏仁状組織が多数見られ、サポナイトを付随する。これらは時間が経つと失透して白くなる。 FT-IR の反射スペクトルでは低温石英とオパールのピークが混在したスペクトルが得られた。粉末 XRD 分析においては主に低温石英が確認され、ごく弱いオパールやトリディマイトの反射も見られた。このオパールを含む晶洞は、紫外線下において黄緑~緑色の蛍光を発し、付随するカルサイトはピンク色の蛍光を発する。
高橋・佐々木(1997)等で当地の火山類は詳細に研究されているが、この母岩はさらにマフィックな岩石であった。 K2O-SiO2 ダイアグラムで既知の日光火山群の溶岩類と比較すると、末端の組成で始原的マグマ起源の溶岩である可能性が高い。このオパールを含むシリカ鉱物を胚胎する溶岩は、周辺の火山類の噴出した溶岩の中でも初期の物で太郎山の古期山体のものか未知の古期火山に属する可能性が考えられる。