トラピッチェ・パターンはエメラルド・コランダム・石英等様々な鉱物中に見いだされる構造である。このトラピッチェとはスペイン語の trapicho(サトウキビを絞る農機具の歯車)に由来し、その独特な歯車状の構造をもつ宝石は稀で、とりわけ人気が高いことで知られている。ガーネットでもトラピッチェ・パターンが見られ(Nang et al., 2023)、近年中国の浙江省からは綺麗な歯車状の構造を呈したガーネットが報告され、市場に流通し始めている(e.g., Wang et al., 2025; Hainschwang 2025)。トラピッチェ・パターンはガーネット中には稀であるとされているが、非常に微小ながらも日本の奈良県二上山産ガーネット中にもみられることが判明したので、報告する。
日本の奈良県と大阪府の県境にある二上山はおよそ 1600-1200 万年前に活発な火山活動により形成された山で、特徴的にザクロ石黒雲母安山岩~流紋岩で構成されている。このガーネット(ザクロ石)を含む岩石が長年の風雨により浸食・風化したことで、二上山付近の堆積物中には多量のガーネットが含まれている。ガーネットの粒の大きさは比較的揃っているため、古くから研磨剤(金剛砂)として採取され利用されてきた。ガーネットは黒色~赤色を呈しており、組成上ではアルマンディンに分類される。直径 1-2mm 程のガーネット粒子 78 粒をランダムに選択・洗浄した後、エポキシ樹脂に埋め込み、研磨作業を実施した。その後、顕微鏡下で各粒子の観察を行った。 78粒子中、 6 粒にセクター構造が見られ、そのうち 2 粒には 6 本のセクター境界が観察された(図1)。セクターには石英と黒色の不透明鉱物の内包物が多く含まれる。このトラピッチェ構造は Hainschwang (2025) で説明されている様な、ガーネットの結晶構造(菱形十二面体)と内包物の配列、そして切断面の位置関係によるものであると考えられる。