主催: 日本歯科理工学会
第42回および第44回歯科理工学会学術講演会において、紫色LEDを光源に用い、新規光重合開始剤を添加した歯科用レジンの重合挙動について報告した。今回はその第3報として、重合後のレジンにおける溶出動態について報告する。重合開始剤として、2種類のアシルフォスフィンオキサイド類(TPO、BAPO)と、従来のカンファキノン(CQ)を用い、前者は紫色LEDで、後者は青色LEDにて光硬化させた。光硬化後のレジンを24時間、エタノールに浸漬し、溶出したモノマーと重合開始剤をガスクロマトグラフィー・マススペクトルにて定量した。その結果、従来のCQ/青色LEDを用いて硬化させたレジンからは、多量のモノマーと重合開始剤が溶出しているのが確認される一方、TPOもしくはBAPO/紫色LEDを用いて硬化させたレジンからは、モノマーの溶出量が少なく、重合開始剤もほとんど溶出していないことが確認された。アシルフォスフィンオキサイド類を重合開始剤に、紫色LEDを光源に用いる重合開始方法は、構成成分の溶出の少ない、つまり、生体安全性に優れたレジンを生成できる可能性が示唆された。