日本歯科理工学会学術講演会要旨集
平成19年度秋期第50回日本歯科理工学会学術講演会(国際歯科材料会議2007併催)
セッションID: P-214
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ポスター発表
Er:YAGレーザーによる歯の切削に与える水の影響
*福岡 哲郎柿本 和俊小正 裕
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抄録

Introduction: 臨床でEr:YAGレーザーを用いて歯の切削を行うとき,外部から注水しながら行うのが通例である。しかし,水の役割については議論がある。歯の構成成分であるハイドロオキシアパタイト内にもOH基が含まれていることが混乱の一因である。そこで,演者らは乾燥歯と湿潤歯に対して外部環境を変化させレーザー照射し、切削時に歯の内部の水と注水が切削に及ぼす影響を検討した。 Materials and Methods: 実験に用いた試料歯は、抜去歯を電気炉内で125℃、24時間乾燥させた歯(乾燥歯)、抜去後直ちに生理食塩水中で保存した歯(湿潤歯)とした。照射条件は試料歯のエナメル質と象牙質に対して先端チップと試料表面との距離を0.1 mmとして、パルス幅を10 ns、照射エネルギーを200 mJに設定し、3 Hzで1秒間(3パルス)と5 Hzで2秒間(10パルス)の2条件とした。外部環境は,照射時の注水を軽水(通常の蒸留水)、重水および大気の条件で行った。なお、軽水はEr:YAGレーザーから放射された光子を吸収するが,重水は吸収しない。形成された切削痕を走査電子顕微鏡にて撮影し、試料表面における面積と深さを計測した。計測結果を歯の乾燥の有無、外部環境および照射パルスを因子とした3元配置分散分析によって検討した。 Results and Discussion 乾燥の有無について、エナメル質、象牙質ともに切削面積は湿潤歯のほうが乾燥歯よりも大きかった( p < 0.01)。切削深さは、エナメル質では湿潤歯のほうが乾燥歯よりも大きかった( p < 0.01)が、象牙質では有意差がなかった。 外部環境について、エナメル質では切削面積は重水、軽水、大気、深さは軽水、重水、大気の順に大きかった。象牙質では切削面積は軽水、大気、重水の順に大きかったが、深さには有意差がなかった。 切削面積は乾燥および外部環境の影響を受け、深さは、エナメル質では乾燥の有無および外部環境の影響を受けるが、象牙質では受けにくいことがわかった。

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© 2007 日本歯科理工学会
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