抄録
チタン合金やステンレス鋼は耐食性が高く、医療用材料として広く用いられている。しかし長期間の生体内での使用による合金成分、特にステンレスやNi-Ti合金からのニッケルの溶出が懸念されている。これまで各種金属材料の生体内での腐食や溶出挙動については定量的評価が成されているが、溶出量が極めて微量であることから、その化学状態まで分析することは困難であった。著者らはこれまで放射光を用いた蛍光XAFS測定により、生物組織中の微量チタンの化学状態の分析が可能であることを明らかにしてきた。本報告ではTi, Ni-Ti合金およびSUS304を動物に長期間埋入した場合の周囲組織への溶出挙動を調査した結果について報告する。