抄録
形状記憶合金繊維で強化した床用レジンが破折した際に、繊維の収縮を利用して簡便で効果的な修復が可能であることをこれまでに報告してきた1-3)。しかし、常温重合レジンを用いた試料の曲げ破壊後の修復においては試料に大きなたわみが観察され、修復後の寸法精度が十分に維持できないことがわかった。この原因は、修復時の温度が試料作製時の温度より高温であるためレジンが硬化収縮を示すこと、試料中の繊維の配向に偏りがあることが原因と考えられた。そこで今回は、加熱重合レジンを用い、繊維を試料中央に整列させた試料を作製し、曲げ破壊後の修復における寸法精度と曲げ強さの変化について検討した。
以上から、繊維を埋入した試料の修復は曲げ強さの点ではレジンのみの試料と同様に効果的であることがわかった。
1mm×2枚、2mm×1枚いずれの試料も常温重合レジン試料3)より変形量が大幅に減少しており、前報3)で問題であった試料のたわみは加熱重合レジンの場合は大きく改善されることがわかった。