日本歯科理工学会学術講演会要旨集
平成14年度春期第39回日本歯科理工学会学術講演会
選択された号の論文の130件中1~50を表示しています
第1日 一般講演(口頭発表)
  • 藤沢 盛一郎, 熱海 智子, 門磨 義則
    p. 1
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    Eugenolなどフェノール類はantioxidantとして作用するだけでなく、高濃度ではpro-oxidantととしても働き細胞障害を示す。下記に図示した各種フェノール類のmonomerとdimerのラジカル捕捉性について前回の本学会で報告した。本研究は、これらフェノール化合物のヒト顎下腺腫瘍細胞(HSG), ヒト歯肉線稚芽細胞(HGF)の細胞傷害性を検討し、そのstoichiometric factor(1モルのフェノールが捕捉できるフリーラジカルの数)との関連を検討したものである。
    以上のことから、フェノール化合物の細胞傷害性はラジカル捕捉性(即ち、フェノールのO-H基が脱プロトン化され易さ、パラ位のHOMO density, dissociation enthalpy)と関連することが分かった。
  • 川瀬 俊夫, 根岸 秀幸, 出口 眞二, 楳本 貢三
    p. 2
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    近年、組織再生医療のために再生医療工学の進歩は目覚しいものがある。生体材料と幹細胞を含む細胞集団によって組織再生が達成されている。歯周組織再生の中で、エナメル基質タンパク質(EMD: エムドゲイン®)による歯周治療法は臨床的に極めて有効であるとの報告がある。我々はEMDをサイトカインのような生理活性物質ではなく、足場(Schafold)としての役割を考えている。以前より、我々はヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)の培養系を確立し、HPLFが産生するタンパク質(HPLF-CM、CMP)に細胞接着·伸展因子(CASFs)活性を見出している。CASFsは歯根膜の再生に重要な因子で、足場としての役割もその一つとして考えている。歯周組織の再生は歯根膜ばかりでなく、歯槽骨とセメント質の再生を伴わなければ成功したとはいえない。そこで、歯根膜に未分化な組織性幹細胞の存在が期待される。そのために本研究においてラット骨髄由来の付着性の細胞(RBMC)を未分化間葉系細胞集団として扱い、足場としてEMDとCMPがRBMCの骨系細胞への分化誘導するのかどうか、評価することを試みた。
    これらのことから、EMDとCPMに対するRBMCの応答は異なり、RBMCは足場としての細胞外基質タンパク(ECM)を認識していることが示唆され、EMDは未分化な間葉系細胞の分化調節に関わっていることが評価された。また、歯周組織再生には歯根膜の線維芽細胞も必須の存在であることも示唆された。
  • 瀬名 真理子, 山下 靖雄, 中野 由美子, 大柿 真毅, 中村 聡, 山下 仁大, 高木 裕三
    p. 3
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    歯内治療には水酸化カルシウム製剤が広く使用される。近年、組織に対して無刺激性であり、自然治癒力を阻害しない組織親和性材料を使用する試みがなされている。小児の歯内療法剤の所要性質には生体親和性、硬組織誘導性、乳歯歯根と同程度の溶解性、生体内温度での硬化性などがあげられ、硬組織の主成分であるリン酸カルシウム系セラミックスの有用性が注目されている。特に小児歯科臨床においては、乳歯特有の現象である交換期の歯根吸収に対して為害作用を及ぼすことなく、より正常な永久歯への交換が期待できる。リン酸カルシウムセメントは、硬化体がアパタイトになるため、優れた組織親和性と骨伝導性が報告されている。本研究では、α-TCP/OCPセメントの歯内治療法への応用を目的として、ラット直接覆髄モデルを使用し、組織学的評価を行った。
    臨床において多用されている水酸化カルシウム貼薬と同等あるいは、それ以上の歯髄保存が可能であり、また組織為害性が少ないことから、α-TCP/OCPセメントは歯内治療薬として有効であると示唆される。
  • 今井 弘一, 早川 徹, 小佐田 義久, 黒田 収平, 中村 正明
    p. 4
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    我々は歯科生体材料が発生に及ぼす影響について, マウスのEmbryonic Stem Cellを活用したin vitro試験法であるEST法を用いてスクリーニングテストを実施してきた. 今回, 歯冠用レジンモノマーを中心に, 2.0-EPDMA, 3.0-EPDMA, 4.0-EPDMA, 1.6-ADMA, 1.8-ADMA, 1.10-ADMA, 6-HHMA, Bis-GMA(6F), MEPC, ホスマーMの10種についてin vitro発生毒性を調べた.
    ID50は, Bis-GMA(6F)が最も小さく, 以下, 6-HHMA, ホスマーM, 1.6-ADMA, 1.10-ADMA, 1.8-ADMA, 2.0-EPDMA, MEPC, 3.0-EPDMA, 4.0-EPDMAの順に大きな値を示した. 両細胞のIC50は, Bis-GMA(6F)が最も小さく, 4.0-EPDMAが最も大きかった. 発生毒性をSpielmann1)らの提唱するPrediction Modelに代入して分類した結果, Bis-GMA(6F), 6-HHMAでClass 2, すなわち, “weak embryotoxic”であったが, 他のモノマーはClass 1, すなわち, “non embryotoxic”に分類された.
  • 海野 亜由子, 土屋 了子, 鳥羽 重光, 二階堂 徹, 田上 順次
    p. 5
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    フッ素徐放性修復材料の二次う蝕抑制効果については、多くの研究がなされている。奥田らは、フッ素徐放性修復材料の二次う蝕抑制効果を、レーザー顕微鏡による簡便な評価法を用いて評価した。(日歯保存誌, 43, 116, 2000.)本研究では、同様の方法を用いて、合着用セメントに焦点を絞り、従来型合着用セメントとレジンセメントについて二次う蝕抑制効果をレーザー顕微鏡にて検討した。
    以上より、合着用セメントであるEL、CAはグラスアイオノマーセメント、レジンセメントに比べて耐酸性に劣る材料であり、さらにフッ素徐放性材料では窩洞周囲に耐酸性層が認められることがわかった。このことからフッ素徐放性を有する合着材料を用いることが、より二次う蝕を抑制できる可能性が示唆された。
  • C. Maneenut, T. Nikaido, J. Tagami
    p. 6
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    Caries affected dentin is inner carious dentin layer which is generally not removed during treatment. It is not infected but it is softer than normal dentin due to demineralization (Ogawa et al., 1983; Fusayama, 1993). Meanwhile, fluoride can promote remineralization of demineralized enamel (ten Cate et al. 1999) and also inhibit dentin demineralization (Pereira et al., 1998). Hardness of demineralized enamel increases when such surface is in the fluoride-containing environment (Arends et al. 1980). The purpose of this study was to examine hardness of caries affected dentin after contact to fluoride-releasing materials for 1 week and 1 month.
    These results lead to the conclusion that Fuji IX has more effect on the hardness of caries affected dentin than Fuji II LC.
  • -第2報 in vitroにおける経時的変化-
    渡邊 泰三, 伴 清治, 鶴田 昌三, 中村 洋
    p. 7
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    我々はチタン基板上に電気化学的に配向した針状アパタイトを合成し, 生分解性ポリ乳酸グリコール酸共重合体と複合することにより厚さ約50μmの配向アパタイト含有生分解性膜を調製した. 第38回歯科理工学会において本複合膜をラット皮下組織に埋入し, 生体内で緻密に配向した針状結晶のアパタイトが保持され, 軟組織に対して良好な親和性を有することを報告した. 今回は, 疑似体液中に配向アパタイト含有生分解性膜を浸漬し, 物性の変化および崩壊の過程, また, 含有するアパタイトの経時変化について評価したので報告する。
    以上の結果より, アパタイトを含有したポリ乳酸グリコール酸共重合体膜はアパタイトを含まない膜と比較してSBF中での崩壊速度が大きくなる傾向を示した. 一方, アパタイトの結晶性および組成に変化は認められなかった.
  • 山田 敏元, 堀口 尚司, 森上 誠, 杉崎 順平
    p. 8
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    最近の歯科臨床においては、以前に増して患者サイドからのインプラントデンチャーに対する要望が高まり、インプラント各種システムの充実とともに施術される症例数も増加しつつある。これまでインプラントに関する報告は、それらの殆どが人工歯根のオステオインテグレーションに関する基礎的ならびに臨床的検討に関するものであり、インプラントの上部構造であるスーパーストラクチャーに関する臨床的な検討は殆ど顧みられていない。本研究では、既に基礎的、臨床的検討を経て良好な臨床性能を有するとされる審美的修復材料であるエステニアにより作製されたスーパーストラクチャーの短期的臨床経過を慎重に調査した。
    以上により、エステニアのインプラントのスーパーストラクチャーとしての臨床有効性が、短期間の臨床経過の観察期間ではあるものの明かとなった。
  • 浅岡 憲三, 平野 進
    p. 9
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    レジンの吸水は、膨張による寸法の不適合、材料の劣化、イオン溶出の原因となっている。吸水の問題は、吸水量と吸水速度についての議論が必要であり、最大吸水量についてはISOで規格が決められている。しかし、吸水速度については明確な議論がなされていない。一般に、吸水速度は拡散係数で表す。そこで、レジン中の水の拡散係数を求める方法を提案し、異なる板厚をもつコンポジットレジンの吸水速度を測定することにより、理論を検証した。
    理論値と実験点が良く一致したことから、ここでの方法により求めた拡散係数が材料評価の指標になることが示唆された。
  • 高橋 英和, 岩崎 直彦, 金 景月, 青柳 裕仁, 井上 利志子
    p. 10
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    コンポジットレジンは物性の改善とともに広く歯冠修復物に使用されている. 口腔内修復物は咀嚼による繰返し荷重を負荷されるため, 繰返し疲労挙動についての検討が注目されている. 我々はすでにコンポジットレジンを長期間水中浸漬すると製品によっては静的強さのみでなく疲労強度も減少することを報告した. しかし, 長期間水中浸漬での評価結果を得るには時間がかかるため, 早期に物性の劣化を評価するための各種加速度劣化試験法が提案されている. 本研究では沸騰水浸漬による加速度劣化試験を行い, コンポジットレジンの曲げ試験による疲労強度がどのように変化するかを測定し, 加速度劣化試験としての沸騰水浸漬の有効性について検討した.
    しかし, 沸騰水浸漬3日で製品により違いが認められたことより, 加速度劣化試験として沸騰水浸漬は有効と考えられる.
  • 白石 孝信, 久恒 邦博, 田中 康弘, 三浦 永理, 詫間 康子
    p. 11
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    ポーセレン焼付け鋳造冠は, ポーセレンの持つ優れた生体親和性や審美性と, 金属材料特有の優れた靭性を活用した歯冠修復物であり, 歯科医療に重要な役割を果たしている。近年, パラジウムを含有しないポーセレン焼付け用高カラット金合金が開発され, 種々の製品が実用化されている。この合金は, 成分のほとんどが金と白金で占められ, その他にインジウムや鉄, 亜鉛などの非貴金属元素が少量添加されたものであるが, その色調は製品により微妙に異なっており, 少量の添加元素が合金の光学的性質に複合的な影響を及ぼしているものと考えられる。一般に, 歯科用金合金においては, その色調の制御は, 合金組成の設計上, 重要な要素の一つと考えられるが, 合金の化学組成と光学的性質の関係は詳細に検討されていない。そこで本研究では, パラジウム無添加ポーセレン焼付け用金合金の光学的性質に及ぼす各種添加元素の影響を明らかにすることを目的とした。すなわち, 母合金としてAu-10at.%Pt合金を作製し, この合金の光学的性質に及ぼすIn, Fe, Zn, Snの単独添加の影響と, 実用合金におけるIn含有量に近い2at.%Inと少量のFeまたはZnの複合添加の影響を分光測色計を用いて検討した。
    本研究で用いた合金の価電子濃度(e/a値)と, 知覚色度指数a*値およびb*値の関係を検討すると, a*値はe/a値の影響をあまり受けないが, b*値はe/a値の増加とともに増加する傾向を示した。このことは, 合金の価電子濃度が増加すると, 色調が黄色みを帯びることを意味している。
  • 田中 聡, 山方 秀一, 宇賀 大, 諏訪 伸輔, 飯田 順一郎, 宇尾 基弘, 大川 昭治, 菅原 敏, 亘理 文夫, 小林 雅博
    p. 12
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    演者らが開発研究を進めているFRP型矯正ワイヤー(以下、FRPワイヤー)は、透明で審美性に優れているが、大きな叢生では曲げ破壊を起こしやすい。前回、適応可能な条件を調べるために、基礎研究として巻きつけ曲げ試験により、破壊に及ぼす曲率半径と繊維体積分率の影響を調べた。しかし、ブラケット挿入後における本ワイヤーのクリープ挙動についての所見は少ない。本研究では簡便な治具を作成し、クリープ試験と応力緩和試験を行い、たわみと負荷時間が矯正用FRPワイヤーの機械的性質に及ぼす影響を検討した。
    クリープ試験、応力緩和試験の負荷時間依存性の結果には、試料中に内在する欠陥に起因する早期破壊の影響が見られた。
  • 松下 悟, 水本 登志雄, 新家 光雄, 福井 壽男
    p. 13
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    銀パラジウム銅金合金は, 鋳造のままあるいは熱処理を施してから臨床に供されるが, しばしば破損する例が見られる。これは, 適切な熱処理条件で使用されていないことが主原因として考えられる。そのため, 熱処理組織, すなわちミクロ組織と引張特性および疲労特性等の機械的特性とを関連付けた研究がなされている。また, 口腔内は絶えず腐食環境であるため, 耐食性の評価も行われている。しかし, これまでの報告では, 組成を変化させたときの耐食性を評価した例がほとんどであり, 種々の熱処理によってミクロ組織を制御し, それらミクロ組織が本合金の耐食性に及ぼす影響について報告した例は見あたらない。そこで, 本研究では, 市販の銀パラジウム銅金合金に種々の熱処理を施し, ミクロ組織を制御した試料につき, 人工唾液中および0.9%塩化ナトリウム水溶液中にて耐食性試験を行い, 本合金の腐食特性に及ぼすミクロ組織の影響について検討した。
    以上より人工唾液中および0.9%塩化ナトリウム水溶液中におけるアノード分極曲線では, 本合金のミクロ組織の影響は認められない。また, 人工唾液中の方が0.9%塩化ナトリウム水溶液中より腐食反応が起こりにくいと言える。
  • —Co-Cr合金の鋳造—
    玉置 幸道, 張 祖太, イスラム ラフィク, 岡崎 雄一郎, 宮崎 隆, 田中 怜
    p. 14
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    第一リン酸マグネシウムを結合材として利用した試作歯科鋳造用リン酸塩系埋没材は硬化時や鋳型焼成時に有害なアンモニアガスの発生がなく, 技工作業環境の改善に効果があると考え, 研究を重ねている1). また第38回大会の発表2)では第一リン酸マグネシウムが水に可溶であることに着目して, ペースト状に調整した完全ダストフリー型のリン酸塩系埋没材の開発についても検討した. その結果, ペースト·ペーストタイプのリン酸塩系埋没材は粉末で検討した物性と比較しても大きな差がないことを明らかにした. 今回の発表では, 試作アンモニアフリーリン酸塩系埋没材の歯科臨床使用上での用途を明らかにすることを目的とした. はじめにリン酸塩系埋没材でないと鋳造が不可能であるCo-Cr合金に対する有用性について, 通法にしたがって作製された鋳造体から検討を行ったので報告する.
    今回試作した埋没材ではCo-Cr合金の収縮量を十分に補償できないことが明らかとなったが, 今後は結合材成分の構成比, 耐火材の粒度や他の歯科用金属や冠橋義歯, 有床義歯への利用についても検討を進めていきたい.
  • —過酸化水素を含む溶液中での電気化学的挙動—
    阿部 智行, 松本 まき子, 吉成 正雄, 河田 英司, 小田 豊
    p. 15
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    チタンによる補綴物が普及してきているが, チタン製金属義歯床が変色したとのトラブルが散見される. 各種義歯洗浄剤および義歯洗浄剤成分による変色について調べるとともに, その原因について検討を行い, 強アルカリ性の義歯洗浄剤が変色の原因となることを明らかにした1). また, 第37回日本歯科理工学会において電気化学的側面から変色の原因の検討を行った2). その結果, チタンの変色にはNaOHなどのアルカリ成分および過酸化水素の存在が大きな要因の一つであることを明らかにした. そこで過酸化水素の影響を詳細に検討するために, 過酸化水素濃度を変えてチタンの変色および電気化学的腐食挙動を検討した.
    以上の結果より, 0.2mol/LのH2O2濃度でも変色が認められ, 過酸化水素は濃度依存的にチタンの変色および腐食に影響を与えることが, またその影響は電解質の存在でより顕著になることが明らかになった.
  • 高木 亮, 服部 雅之, 長谷川 晃嗣, 吉成 正雄, 小田 豊
    p. 16
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    近年チタン及びチタン合金の補綴物が次第に応用されるようになってきた。それに伴い、チタン及びチタン合金の補綴物の製作や修理のためのろう付も必要となってきている。チタン及びチタン合金の歯科における接合については、赤外線ろう付器を用いる場合1)やレーザーを用いた2)報告があるものの, 接合強さや操作の煩雑さの点で問題を残している. 演者らはチタン粉末(パウダーメタル)を用いた焼結法によってチタンの接合方法を確立することを考案し, その基礎的実験として形状と粒度の異なるチタン粉末を用い, 接合実験を行った結果, 有用な知見が得られたので報告する.
    これらの結果から、粒径が小さい球形粉が最も強い接合強度を示すことが明らかとなった。
  • —Ti-Nb-Cu合金の機械的性質—
    高橋 正敏, 菊地 聖史, 飯島 一法, 高田 雄京, 奥野 攻
    p. 17
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    前報1)まで, チタンの機械加工性の向上を目的として金, 銀, 銅, ニオブのいずれかを添加した2元系チタン合金を試作し, その研削性や機械的性質を調べてきた. その結果, いくつかの組成において試作2元系チタン合金が純チタンより優れていることが分かった. そこで, 添加元素を組み合わせて3元系チタン合金とすることで, 研削性と機械的性質のさらなる向上が期待される. 本研究ではチタンにニオブと銅を添加した3元系チタン合金を試作し, その鋳造体の引張強さと伸び, 硬さを調べて, 添加効果について検討した.
    以上の結果から, 試作3元系チタン合金の引張強さは基本組成とした2元系チタン合金よりも大きくなった. Ti-18%Nb-2%Cuの引張強さは約860MPa, 伸びは約4%, 硬さは約330であった.
  • (第2報) 試作Ti-Nb合金と市販チタン合金の比較
    菊地 聖史, 奥野 攻
    p. 18
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    チタンは耐食性や生体親和性に優れた金属元素であるが, 歯科用CAD/CAMにおいて機械加工性が悪いことが問題となっている. これを解決する方法の一つとして, チタンの合金化が考えられる. CAD/CAM用として機械加工性に優れた歯科用チタン合金を開発することを目的として, 前報1)では試作Ti-Nb合金の切削性をCP Tiと比較した. その結果, 主軸モータ電流においてCP Tiより切削性が良いことが分かった. 本報では前報に引き続き試作Ti-Nb合金の切削性を市販チタン合金と比較した.
    以上の結果から試作Ti-Nb合金はTi-6Al-7NbやTi-6A1-4Vより切削力において切削性が良いことが分かった.
  • —レジン系セメントの接着について—
    吉田 貴光, 上條 都, 溝口 利英, 永沢 栄, 伊藤 充雄
    p. 19
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    チタンはインプラント材, 矯正用ブラケット, や補綴物として臨床に使用されている. インプラント材と上部構造物との接着, ブラケットと歯質との接着, そして, クラウンブリッジの歯質との接着には安定性と接着強さが大きいことが要求される. Tiの接着には, 加熱することなど種々検討され, 接着強さが向上している. 本研究は, Ti表面を過酸化水素溶液とハロゲンランプを併用した処理を行い, Ti表面のL*, a*とb*の色彩の変化, 走査型プローブ顕微鏡による表面観察, レジン系接着剤の接着強さ, 濡性についてそれぞれに検討を行った.
    Ti表面をH2O2と光照射器を用いて160秒間処理することによって, 接着強さは向上した.
  • 伴 清治, 門川 明彦, 蟹江 隆人, 有川 裕之, 藤井 孝一, 田中 卓男
    p. 20
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    口腔内修復物として, 生体適合性の良いチタンの使用が増加しつつある. また, 前歯部に金属製修復物を用いる場合, 審美性と摩耗を考慮し, 硬質レジンで前装されるのが一般的である. しかし, チタンヘレジンを接着するための下地処理に関する研究は少なく, いまだ確立された方法はない. 一方, チタンはアルカリ処理により, 表面に複合酸化物が生成され, 粗造な凹凸を生成することが報告されている1, 2. 本研究ではアルカリ処理を施した純チタンおよびチタン合金に硬質レジンを前装し, その接着強さを測定することにより, 歯冠用硬質レジン前装用前処理法としての可能性を検討した.
    これは, チタン表面へのOH基の生成だけでなく, 表面の凹凸およびその機械的性質が接着に大きな影響を与えているためと考えられた.
第1日 一般講演(ポスター発表)
  • Luciana M. Hirakata, 今 政幸, 浅岡 憲三
    p. 21
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    前回の日本歯科理工学会学術講演会で、α型リン酸三カルシウム(αTCP)を基材粉末とするリン酸カルシウムセメントへ炭酸カルシウム(アラゴナイト)ウィスカーの複合を検討した結果を報告した1)。そのウィスカー添加により硬化体中には炭酸アパタイトの生成が確認され、さらに硬化体に対して著しい強化効果が得られることがわかった。そこで本研究では, 炭酸カルシウムウィスカーを複合したりリン酸カルシウムセメント硬化体の炭酸アパタイト生成と強化の機構に関して詳細な検討を行った。
    以上、リン酸カルシウムセメントへ適用したアラゴナイトウィスカーは、硬化体組織を緻密にする効果と繊維形状効果により強化に寄与できることを明らかにした。さらに炭酸アパタイトを生成できることから、骨代替材料として有効であることが示唆された。
  • 金子 和之, 横山 賢一
    p. 22
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    Ni-Ti超弾性合金は歯科矯正用線材として広く利用され治療に効果をあげているが、口腔内における使用に際し変色·腐食、あるいは超弾性特性が失われたり場合によっては破折することがある。演者らはNi-Ti超弾性線破折の原因の一つとして、水素吸収による材質劣化をカソードチャージ法により調べてきた1, 2)。口腔内でNi-Ti合金中に水素が侵入する条件はいくつかあると考えられるが、その一つとしてフッ素の影響がある。フッ素は飲食物に極微量含有し、歯面塗布液、歯磨剤、洗口液などにう蝕予防の目的で添加されている。フッ素の影響はTiの変色·腐食について調べられているが3)、Ti合金中への水素吸収についてはほとんど知られていない。そこで本研究では口腔内でNi-Ti合金中に水素が侵入する環境の一つとして、リン酸を添加した酸性フッ化ナトリウム(以下APF: Acidulated Phosphate Fluoride)水溶液について検討した。
    以上の結果から、Ni-Ti超弾性合金が口腔内で水素吸収し材質劣化する環境の一つとしてAPF水溶液があることがわかった。
  • (第1報) 結晶性がin vitroでの分解に及ぼす影響
    中川 正史, 寺岡 文雄, 高橋 純造
    p. 23
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    生体吸収材料を用いて生体内の欠損部に新しい組織を再生する場合, 目的とされる部位での生体吸収材料の分解速度や機械的性質を制御することは重要である. 本研究では, ポリ乳酸の分解速度を制御することを目的とし, 成形後に熱処理による結晶性と結晶性がin vitroでの分解性に及ぼす影響について検討した.
    このことから, 分子配向により熱処理時の結晶化状態が変化し, ポリ乳酸の分解は試料表面の分子の配向状態や結晶状態の影響を受けると考えられる.
  • 水本 登志雄, 新家 光雄, 福井 壽男
    p. 24
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    Ag-Pd-Cu-Au合金は, 歯科用金属材料として広く用いられている。歯科用金属材料は, 臨床に供する際に口腔内環境で用いられるため, それ自身が口腔内環境から影響を受けると同時に, 口腔組織に対してさまざまな影響を与えている。口腔内環境下で, 歯科用金属材料と特に関わりの深い外的因子として唾液や咀嚼力などがあげられる。本合金が, 歯科用修復物として用いられる場合、だ液の作用により腐食を生じ, 金属イオンの溶出や破壊が促進されることがある。したがって, 口腔内環境は歯科用金属材料にとって過酷な環境である。また, 咀嚼力によって大きな応力が作用するため各種の腐食現象が共存する複雑な環境で修復物と対咬歯との間の摩擦によって破損·摩損をきたすため, 腐食環境中での摩擦摩耗特性について考慮する必要がある。そこで, 本研究では市販の歯科用Ag-Pd-Cu-Au合金に種々の熱処理を施し, 腐食環境中で摩擦摩耗試験を行い, 摩擦摩耗特性に及ぼす腐食環境の影響について検討した。
    以上より, 摩擦摩耗試験の時間が短い場合, 腐食の影響は見られず, 本合金の摩擦摩耗特性には溶液の粘性が影響を及ぼしていると言える。
  • 田中 滋, 荒木 吉馬, 三浦 廣行
    p. 25
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    現在市販されている矯正ブラケット用接着材は, ブラケットをエナメル質に対して非常に強固に接着させることができる. しかし, それ故にブラケット撤去(以下ディボンディング)時に患者が疼痛を訴え, またエナメル質に損傷を与えることがある. この問題を解決するには, ブラケットを装着している治療期間中は十分な接着強度を有し, ディボンディングの際にはその強度を低下させて, エナメル質を損傷させることなく, また患者に疼痛を与えることなく容易にディボンディングできる接着システムが必要である. このような操作が可能な接着システムとして, 今回我々は歯質およびブラケット材料との接着力が強く, かつ水に弱い接着材を用いて, 接着期間中は接着層周囲に防水シールを行って, 接着界面への水の浸透を防止する方法を考案した. 本研究では, この接着材を用いて歯とブラケット材料とを接着した後, さらにシーリング材で接着層周囲を覆い, 接着界面に水分が浸透しないようにしたもの, 一定期間防水シールを行った後シーリング材を除去したもの, および防水シールを行わなかったものについてそれぞれ水中保管し, 引張試験により接着強度を測定した.
    すなわち, 本接着システムを応用することで, 矯正治療期間中は十分な接着強度を維持し, 治療終了後には容易にディボンディングできる可能性が示唆された.
  • (第2報)—機械的性質について—
    谷本 安浩, 長塚 明久, 根本 君也
    p. 26
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科用セラミックスは, オールセラミッククラウン, ポーセレンインレーなど臨床に多く用いられている. しかしながら非常に脆いという欠点を有する. セラミックス基複合材料は, 既存の歯科用セラミックスの欠点を改善しうる高比強度, 高靱性材料として期待される. そこで本報では, プリプレグを積層することにより繊維強化セラミックス(Fiber reinforced ceramics: FRC)を作製した. さらにFRC成形体の収縮率を測定するとともに, 引張, 曲げ, 破壊靱性試験を行い, 作製したFRCの機械的性質について検討した.
    以上の結果からFRCのマトリックスにかかる負荷を強化繊維が担うことにより強度が向上し, またマトリックスに発生した亀裂の拡大が繊維により阻止され靱性が向上したものと考えられる.
  • (第2報)—タイプIII金合金について—
    永沢 栄, 吉田 貴光, 溝口 利英, 矢ヶ崎 裕, 伊藤 充雄
    p. 27
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    前報(第38回日本歯科理工学会)1)では, 鋳造用金銀パラジウム合金の熱膨張率, 熱膨張係数, 高温強度、組成について検討を加え, 凝固収縮率が0.932%であること, 固液共存領域の強度が極めて小さいこと, 凝固速度により粗大化樹枝状晶が発生すること等を報告した。今回は, 歯科用合金の基準となるタイプIII金合金について, 熱膨張率, 熱膨張係数, 高温強度, 固液共存領域の金属組織とその組成変化, 凝固速度と金属組織との関係について検討したので報告する。
    タイプIII金合金は, `固液共存温度領域においてもある程度の強度を有しており, 凝固収縮が鋳造体の適合に影響を及ぼす可能性が示唆された. この強度は, 同温度領域における固相粒の形態に依存しているものと推察される.
  • 有働 公一, C. N. Luciano, 中川 雅晴, 松家 茂樹
    p. 28
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    AuCu-Ag擬2元合金は歯科用金合金の基本となる合金系であるが、硬化熱処理を行うと、Cuに富む相とAgに富む相に相分離し、耐食性を損なう。これに対して、我々は、Ag以外の元素Gaを添加することで、耐食性に優れ、しかも室温で時効硬化する歯科用金合金を開発した。本研究は、Ag以外の第三元素を含む新しい歯科用金合金を開発する第一段階として、等原子比のAuCu合金にSnを添加した合金系の擬2元状態図を作成することを目的とする。
    Fig. 1に本研究で決定したAuCu-Sn擬2元合金状態図を示す。
    AuCuIII型規則格子相はRaynorら[1]がAu-Cu-AuGa系合金で報告しているが、AuCu-AuGa合金系以外でこの規則相の存在が確認されたのは本合金系がはじめてである。
    Karlsenら[2]はSnが高い領域における状態図を報告しているが、この状態図とEDXによる濃度分析の結果から、280℃における平衡状態図を見積もった。Fig. 2に280℃における部分平衡状態図を示す。
  • Hyo-Joung Seol, Takanobu Shiraishi, Yasuhiro Tanaka, Eri Miura, Kunihi ...
    p. 29
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    Zn is usually added to dental casting gold alloys as deoxidizer and to improve the castability. We observed in the previous study that the addition of Zn to AuCu lowers both liquidus and solidus temperatures of the alloy and this increases the age-hardening rate in low temperature like 37°C [1]. But the effect of Zn addition to dental casting gold alloys on age-hardening behaviors have not been clarifed yet. The purpose of this study is to examine the effect of Zn addition on the full stage of age-hardening behaviors and to clear the relation between ordering behaviors and age-hardening of the AuCu-Zn pseudobinary alloys by hardness test, X-ray diffraction (XRD) and transmission electron microscope (TEM) observation.
    With Zn content, the age-hardening rate was increased and overaging was delayed.
    From XRD study, it was revealed that with Zn content the AuCu II phase become stable and antiphase domain size of the AuCu II superstructure markedly decreased. This means that the addition of Zn to AuCu effectively increases the density of antiphase boundaries per unit volume of the AuCu II superstructure. This is suggested to be the main cause for the retardation of the overaging in the alloys containing 5at.% Zn or more. It was revealed by TEM observation that the fast age-hardening of Zn added alloys is due to the coherent strain by lattice distortion which is made during the very early stage of ordering.
  • 齋藤 設雄, 荒木 吉馬, 平 雅之, 昆 隆一, 桂 啓文, 福岡 恒夫
    p. 30
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまで市販の金銀パラジウム合金よりもPd量を少なく、Au量を多くした試作合金の耐食性について、0.1%Na2S溶液への浸漬試験とX線光電子分光(XPS)を用いた表面分析により検討を重ねてきた1)。その結果、AuとPdが多いものほど耐硫化性は良くなるが、合金全体に含まれる貴金属元素の割合だけでは決定づけられないことが示唆された。すなわち、鋳造時の表層部の偏析が腐食に影響することが考えられた。そこで本研究では、金銀パラジウム合金鋳造体について、鋳造のまま、表面酸洗い後および溶体化処理後の表層部の元素濃度分布の変化を調べた。
    以上の結果から、金銀パラジウム合金の鋳造体表面は鋳造時の酸化により非貴金属成分が消失した。その後の溶体化処理によって合金組成は均質化傾向を示すことが確認された。しかし、Cuは容易に酸化されるため、金属表層のかなり深い層までCu濃度の減少がみられた。これに代わってAgが濃化した。このことは金銀パラジウム合金はバルクの組成だけでなく、表面の組成によっては耐食性に違いが生じるものと考えられた。
  • —ISO方式(個別と一括)とJIS法の比較—
    吉田 隆一, 青木 春美, 岡村 弘行, 宮坂 平
    p. 31
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    国際的な規格とJIS規格との整合性は、歯科においては歯科医療の質的向上をもたらすのみならず、歯科材料や機械の国際的規格の統一という意味において重要である。ISO/TC106 Dentistryにおいては、類似の規格の統合やハーモナイゼーションの動きが活発である。このISOの動向は、JISにも影響を及ぼしており、耐変色性試験法もその一つである。JIS法(JIS T 6106-1991 歯科鋳造用金銀パラジウム合金)は、いわば静的浸漬試験法である。これに対して、現在作成されつつあるISOの金合金の規格(ISO/CD 1562:2001 Dentistry—Casting gold alloys, AnnexB)においては、1μmの研磨ペーストで仕上げた試料に23±2℃で0.1mol/lNa2S溶液中(JISの約7.8倍の濃度)に60秒間のうち10∼15秒浸漬するようなサイクルを繰り返し、24時間ごとに溶液を新しいものと交換し、72時間試験するという動的な試験法となっている。しかし、この試験法においては、同時に大きなプールに複数の異なる金属を浸漬するため電池形成の影響が懸念される。また、JIS法との比較という点においては、試験法により合金種別にどのような評価の違いが生ずるかという事が重要であると考えられる。これらの点を明らかにするために、ISOとJISとの変色試験法による各種歯科用合金の耐変色性に及ぼす影響の違いを調べることを目的とした。
    以上の結果より、ISO方式においては、溶液を個別とするか、一括とするかにより一部の合金で耐変色性の評価に差を生じる可能性はあるが、おおむね同等と考えられる。またJIS法との比較においては、市販の金合金でも銀合金と同程度の大きな変色となり、合金の耐変色性の優劣を示すには、過酷過ぎる条件であると考えられる。
  • 荒木 吉馬, 小川 彰, 斎藤 設雄, 平 雅之, 昆 隆一, 桂 啓文, 福岡 恒夫
    p. 32
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    磁気共鳴画像(MRI)脳神経領域における術前、術後の臨床診断に欠かすことが重要な検査手段になりつつある。しかし、撮影画像においていくつかの原因に由来するアーチファクト(AF)が生じ、正確な情報が得られなくなり、重篤な患者の診断、処置に支障を来すことがある。そのひとつに、上顎に歯科処置された金属補綴物、修復物に由来する不均一静磁場の影響がある。これまでにもこのことは指摘されてきたが、近年、MRI装置の高磁場化が進み、装置の磁束密度が従来の0.2∼1.5テスラ(T)から3.0Tへと飛躍的に高い装置が開発されている。これに伴い、歯科用合金によるAFも大きくなっている。そこで、今回、0.5Tおよび1.5TのMRI装置に加えて、本学に導入された3.0Tの超高磁場MRI装置を用いて、各種の歯科用合金によるAFの大きさを磁場強度と撮像方法を変えて測定し、合金の磁化率との関係についても検討を加えた。
    以上により、今後、超高磁場MRI診断が普及することを考慮すると、上顎に用いる歯科用金属としてAFのより小さい材料の選択が重要であると考えられる。
  • 横山 賢一, 金子 和之, 森山 啓司, 浅岡 憲三
    p. 33
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    Ni-Ti超弾性合金は歯列矯正用線として治療に効果を上げているが、口腔内で破折することがしばしばある。破折にはいくつかの原因があると考えられるが、その一つに環境脆化による材質の劣化がある。演者らはリン酸を添加した酸性フッ化ナトリウム(以下APF: Acidulated Phosphate Fluoride)水溶液中でNi-Ti超弾性合金が水素を吸収し材質劣化することを示した1)。また、Ni-Ti超弾性合金はマルテンサイト変態開始応力以上の負荷応力で環境の影響を受けやすいため2)、溶液中での材質劣化を議論するためには応力負荷した場合について調べる必要がある。その場合、よりマイルドな環境であるリン酸添加無しの中性NaF溶液中でも遅れ破壊する可能性もある。そこで本研究では、APF水溶液とNaF水溶液中でNi-Ti超弾性合金の遅れ破壊特性について調べた。
    以上の結果から、Ni-Ti超弾性合金は中性NaF水溶液中においても遅れ破壊することが示され、特にマルテンサイト変態開始応力以上の負荷応力下で劣化は促進されることが明らかとなった。
  • —過酸化水素還元—
    神山 明生, 山岡 大, 野元 成晃, 藤原 忠夫
    p. 34
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    金属の腐食を引き起こす酸化剤として, 主に溶存酸素が挙げられるが1), 2), 生体内では活性酸素も酸化剤として働く。様々な活性酸素のうち過酸化水素は, 溶存酸素還元反応が2電子還元で終わった場合の反応中間体でもあり, その還元挙動は重要であるにもかかわらず, 広く研究されているとは言い難い。そこで, チタンおよびチタン合金の過酸化水素還元反応を電位走査法を用いて検討した。すなわち, 試験溶液に過酸化水素を添加し, 開路電位から卑な電位域での陰分極曲線を測定したところ, 過酸化水素添加とともに, -0.5V(SCE)付近から還元電流が増加し始め, 添加濃度に依存した限界電流値が観測された。以上から, 溶存酸素還元反応に伴って生成する可能性のある過酸化水素は電極近傍に蓄積されることなく, 容易に還元されることが示された。
    以上から, チタンおよびチタン合金ともに, 過酸化水素は開路電位付近から還元され, その還元挙動は試験溶液のイオン組成によって異なることが示された。
  • Awlad Hossain, Seigo Okawa, Syuji Nakano, Masayoshi Kobayashi, Osamu M ...
    p. 35
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    Since titanium has excellent corrosion resistance and biocompatibility, it has been widely used as biomaterial in fields of orthopedics and dental surgery. It is believed that the thin oxide film formed on titanium plays important roles in interfacial phenomena such as corrosion and bio-tissue reactions. The presenters have investigated the chemical composition and structure of surfaces polished with abrasives of silicon carbide and ferric oxide. The aim of the present study was to investigate the surface composition and structure of titanium polished with colloidal silica and chromic oxide.
    In conclusion, choromic oxide is liable to contaminate titanium surface even under low pressure, while colloidal silica creates a mirror-like and chemically clean surface even under high pressure.
  • 岡田 英俊, 今井 博史, 島野 偉礎轄, 石田 喜紀, 長山 克也
    p. 36
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    チタニウム·ジルコニウム合金は純チタニウムに比較し物理化学的性質に優れており、クラウンやブリッジなどにも臨床応用が有用と考えられる。そこで今回は, チタニウム·ジルコニウム合金と硬質レジンの接着耐久性を向上させる金属表面の処理条件を検索すべく、チタン系カップリング剤、シランカップリング剤および加熱処理による接着強さについて、サーマルサイクル試験と剪断試験で純チタニウムと比較検討したので報告する.
    以上のことから、チタン合金と硬質レジンの接着耐久性の向上には、サンドブラスト処理以降に加熱処理およびチタン系カップリング剤の使用が有用であることが示唆された。
  • 大熊 一夫
    p. 37
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    外側性タイプと内側性タイプの混合であるMODインレーなる鋳造修復物がある。穴の開いたリングと吸水ポリマーを応用して、精確なMODインレーの作製を目的とする。開放度を変えた穴開きリングを作製し、吸水ポリマーを含んだシートでこの穴を塞いで、埋没操作を行う。吸水ポリマーにより練和泥の水分が取られ、混水比が小さくなり硬化膨張が増大する。リングの開放度により埋没材の膨張量と膨張する範囲が変化し、リング内で膨張の偏りが生じ、精確なMODインレーが作製可能となる。今回は、(1)吸水ポリマーを含んだシートが埋没材の硬化膨張に及ぼす影響、(2)クラウンのワックスパターンとMODインレーのワックスパターンを用いて、鍛造体の膨縮率を測定した。
    〓かた練り(0.32)で練和した泥の上下に吸水ポリマーを含んだシートを置くと硬化膨張は1.9%となり、うす練りのシート無しの約2倍も増大した。〓穴の開いたリングと吸水ポリマーを用いることにより、鋳造体はX(頬舌)軸方向とY(近遠)軸方向で膨縮率が異なった(図1)。〓MODインレーの膨縮率から直交分解分散して、各X(頬舌)軸方向とY(近遠)軸方向における回帰式を求めた(図2, 3)。これらの回帰式により、使用するセメントの種類(被膜厚さ)を考慮した精確なMODインレーを作製することができる。
  • -その1-, 再利用埋没材の機械的性質
    宇田 剛, 黒岩 昭弘, 峯村 崇史, 鈴木 章, 関口 祐司, 五十嵐 順正, 伊藤 充雄
    p. 38
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    本実験は, 一度鋳造に使用した石膏系埋没材を再利用する事を目的として粉砕し, 新しい埋没材に添加し, 埋没材の諸性質の変化および金銀パラジウム合金による適合試験と表面あらさについて検討を行った.
    以上の実験結果より石膏系埋没材の再利用は埋没材の強度を低下させるが, 鋳造圧に耐え, バリ等の鋳造欠陥が生じることなく, 鋳造体を作製することが出来た.
  • —粉末グラファイト·窒化チタン基埋没材の膨張率および鋳造体反応層抑制効果について—
    矢崎 勇匡, 菊地 久二, 高岡 謙次, 安斎 碕, 井上 太郎, 河西 宗一郎, 西山 實
    p. 39
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    チタン鋳造用埋没材の開発の一環として, 窒化チタンおよびグラファイトを基材とし, アルミナセメントを結合材としたクラウン, ブリッジ用埋没材を試作し, 硬化および加熱膨張率, 加熱係留時および係留後の膨張率の変化, X線回折による熱膨張機構などの検討を行った. 併せて鋳造体反応層生成の抑制効果についても検討を行った.
    以上から, 本チタン鋳造用試作埋没材は, チタンの鋳造収縮を補償する膨張率ならびに, 反応層生成の抑制効果を有することが明らかとなった.
  • (第2報)-溶接体形状と溶接深さが及ぼす影響-
    前原 聡, 藤島 昭宏, 廣嶋 ふみ子, 宮崎 隆
    p. 40
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    演者らは前回の学術講演会にて3種類の白金加金棒とチタンに対しレーザー溶接を施し, その接合強度を評価した結果, レーザー照射面にクラックが入りやすく引張強さが低い事を報告した. しかしながら, 一般臨床上において白金加金とチタンを用いてレーザー溶接を施して製作された補綴物の予後については良好な物が多い. そこで今回, 試験片形状と溶接条件の違いによる溶接深度と溶接状態が引張強さに与える影響について詳細に検討した.
    今回の結果より, レーザー溶接では一般的な金属接合技術とは異なり, 金属に対して接合部断面全てに対し溶接を施すよりむしろ溶けこみ深さが浅くても欠陥を発生させない条件であれば接合強度が向上する可能性が示唆され, 現在臨床上で使用されている補綴物にも対応可能である事が判明した.
  • (第3報)-インプラント補綴における計測-
    李 元植, 前原 聡, 宮崎 隆
    p. 41
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    「新しい補綴物製作法」という観点から, 演者らはブリッジメタルフレームをレディメイドの部品を組み立ててレーザ溶接によって一体化させた製作法を提案した1). インプラント補綴における支台歯形状は各システム毎に決まっているため, コーピングは規格のものを用意し各症例に合わせてそのコーピングを連結する製作法を用いることによって作業の省力化を図り高い精度の安定供給を実現できると考えている. この際に重要なことは症例毎に異なるインプラント体の空間的な位置をどのように抽出するかである. 従来のデンタルCAD/CAMの歯列模型計測は, 模型表層の膨大な数の点をサンプリングし「形状」を抽出することであった. 演者らが行う補綴物製作においては, 既に規定形状を有するアバットメントが口腔内のどこにどのような向きで存在するかという「位置」を抽出することである. 位置情報に基づき規定の形状を有するコーピングを配置し, そのコーピングを連結する部品を症例ごとに設計することにある. よって本法においては形状情報はあまり重要ではないため, 膨大な数の点のサンプリングは不要である. 簡単な装置もしくは従来のデンタルCAD/CAMで用いられている計測装置を流用し, 規定形状の計測子の形状計測より位置情報を算出して短時間で正確に位置情報を抽出できるかについて検討した.
    従ってCCD側から照射点を見た場合, +5∼-5mmの計測で45°の場合の方が角度変化が大きく, その影響が表れたと思われる.
  • 第1報 矯正用材料
    渋谷 功, 谷本 安浩, 西山 典宏, 根本 君也
    p. 42
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    口腔内に装着されている金属材料に後から金属材料を接合したい症例がある。すなわち, 矯正治療のために装着されている鋳造冠にブラケットを装着するとき, 装着されている矯正用バンドに治療途中で矯正線を追加するとき, 顎口腔外科領域の顎間固定用フックを治療中に装着するとき, その他傾斜歯やロングスパンのブリッジで冠を連結するとき, などの症例において口腔内で溶接が可能となれば, 新しい効率の良い治療術式の創出が可能になると考える。著者らは歯科用レーザを用いて口腔内での溶接を行ったところ, 極めて良好な結果を得た。そこで, 溶接後の性質をしらべるために鋳造冠とブラケットおよび矯正用バンドと線を溶接し, 上昇温度, 引張り試験ならびに溶接状態の観察を行った。
    歯科用レーザを用いて金銀パラジウムの鋳造冠とブラケットおよび矯正用バンドと線を溶接し, 以下の結論を得た。1. レーザ照射によるエナメル質直下の上昇温度は数度とわずかであった。2. 溶接された金属の引張り強さは10kgf以上で, 剥離せずブラケットおよび矯正用バンドの破切が生じた。3. 口腔内でのレーザ溶接は操作性が良く, 十分な固定ができた。
  • —印象精度向上のための歯面処理法について
    小島 哲也, 荘村 泰治, 絹田 宗一郎, 長尾 光理, 若林 一道, 中村 隆志, 高橋 純造
    p. 43
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科臨床においては, 診査, 診断, そして修復物や義歯の製作といった治療のために, 印象を採得して歯列模型を作製する方法が一般に行われている. この方法は簡便であるものの, 乳幼児, 障害者および嘔吐反応を起こす患者などでは印象採得が困難であること, 精度が術者の技術に依存すること, 印象から石膏模型が完成するまでに時間を要すること, および模型の保管スペースを確保する必要があることなどの問題がある. 口腔内を直接計測可能な印象法が開発されれば, これらの問題を解決できる可能性がある. 現在, 口腔内直接光印象法を用いセラミックスによるクラウンやインレーなどをチェアサイドで製作可能なシステムも開発されている. しかし, このシステムの計測装置では歯列全体の形状を取得することや口蓋部の印象を行うことは困難である. そこで本研究は, 非接触三次元形状計測装置を用いて口腔内を広範囲に直接計測を行うことを試みた. 光印象の場合, エナメル質の光透過性の問題があり, 歯面に処理を行うことが必要である. また, 臼歯部を計測するためには光を口腔内に導入する方法を考慮する必要がある. 今回は, 歯面処理用パウダーの塗布と口腔内ミラーを用いて口腔内三次元形状の光印象を試みた.
    一方, 歯面処理後はエナメル質表層部が計測できており, 歯面の三次元形状が確認できた.
    一方, ミラーを用いて上顎の咬合面を計測したところ, 図3に示されるように咬合面だけでなく, 口蓋を含めて計測することができた.
  • 若林 一道, 荘村 泰治, 北川 太二, 小原 浩, 古郷 幹彦, 中村 隆志, 松矢 篤三, 高橋 純造
    p. 44
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    我々は, これまで口唇部特徴点間の3次元長さの測定, および口唇口蓋裂患者の口唇形成術における切開線の3次元形状の評価をラインレーザ光スキャン方式超高速3次元計測装置VIVID700を用いて行ってきた. この装置では計測ピッチが0.6mm程度と少し粗いこと, 光学系の関係で口唇付近にノイズが発生することなど切開線シミュレーションを実際の臨床で用いるためにはいくつかの問題があった. しかし, VIVID700と比べ約2倍の分解能を有するVIVID900が開発され, より精度の高い計測が可能となった. そこで, この装置で計測したデータを用い口唇付近の三次元測長を行いその精度を検証した. また, 口唇口蓋裂患者の形成手術では口唇から口蓋にかけて切開が行われるため, シミュレーションを行うにはその間の連続的な3次元データが必要である. そこで, 口唇口蓋裂患者の顔面モデルを本装置で多方向から計測し, 口唇から口蓋にわたる3次元構築を行った. そして得られたデータを用い, 同部の切開線のシミュレーションを試みた.
    実際の縫合を考慮すると切開には0.5mm程度の精度が必要と考えられるが, 本装置により得られた結果は術前に計測した顔面データを用い切開線の3次元形状を評価するのに十分な精度を有すると考えられた.
    多方向からの計測により正面から認識できない口蓋部の形状デ-タも取得することができ, 口唇から口蓋にかけての複雑な形状を再現できた. 図に示したように, 本データを用いることにより口唇から口蓋にわたる切開線をシミュレーションすることができた.
  • — 有限要素法による評価 —
    深瀬 康公, 廣瀬 英晴, 金田 光正, 笹尾 道昭, 八木原 健司, 西山 實
    p. 45
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    G. V. Blackは、技術的特性に基づき窩洞を5つの組に分類したが(Operative Dentistry, 1914)、近年の接着性成形修復材料、すなわちコンポジットレジンの開発·発展はめざましく、窩洞形成の考え方も変遷している。特に接着性のコンポジットレジン修復の場合は、窩洞外形、保持形態、抵抗形態、便宜形態および窩縁形態などの窩洞形成デザインにおいて、非接着性修復材料に見られるような制限は少なく、齲蝕部位歯質の除去を主体として、bevelの付与、窩洞側壁と歯面とのなす角度を60°以上とすることが望ましいなどで、維持安定はコンポジットレジンと歯質との接着性にその全般を担っている。主に接着性に依存している材料であるために、修復物と歯質との材料特性の違いから、咬合によって応力が生じた場合、この応力に抗するような窩洞デザインを付与することによって、より一層修復物の維持安定に寄与することが可能であると考えた。そのため本研究では、単純な窩洞のデザインを3次元構築し、窩洞側壁のテーパー度および窩底面の形態を変化させた場合の充填物に生じる応力を有限要素法により求め、応力の分布から窩洞形成のデザインについて検討した。
    以上の結果より、TAによって応力の値および発現部位が異なった。また、窩底の形状によっても最大応力、応力集中に影響があることが示された。従って、この方法によって窩洞形成のデザインに対する評価が可能と考えられた。
  • (第20報) CCDカメラを用いた計測システム
    堀田 康弘, 小林 幸隆, 小澤 篤, 藤原 稔久, 宮崎 隆
    p. 46
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    これまでに我々が開発してきたCAD/CAMシステムでは, 計測システムとして支台歯の三次元座標データを, ポイントレーザ変位計による一点毎の計測を行ってきた. そのため, 高精度な計測ができる反面, 作業模型全体を計測するには, 15分程の時間が必要であった. また, この方式では隣在歯や支台歯軸面などからの二次反射の影響もあり支台歯形状を忠実に再現するには, 測定時に様々な補正が必要とされた. そこで, 計測時間の短縮と形状再現性の向上を目的として, 一度に沢山の情報を得られるラインレーザとCCDカメラを組み合わせた計測システムを試作し, レーザ変位計を用いた計測システムとの比較を行った.
    これまで用いてきたレーザ変位計による計測では, 真上からレーザの光を当てる方式であったため, このような垂直な軸面を計測した場合に傾斜面として認識されてしまっていたが1), 本装置で用いられるレーザスリット光は斜め方向から照射されるため, こうした問題が回避できることがわかった. また, CCD上での輝度信号から計測点を得るため, ショルダー部と軸面との二次反射によるショルダー部での平面が丸くなる現象もなかった. しかし, 隅角部においてCCD上での輝度信号の収集方法が, まだ不十分であることがわかった.
    こうした模型の計測では, 模型を回転させ多方向からデータを収集することで, 死角となる部分のないデータを得ることができた(図2, 3). しかし, CCDカメラによる計測では一走査で最大480点の計測点が得られるため, 模型全体を計測した場合, その計測点データは莫大なものとなってしまう. 最終的には, この計測点データから平均化処理を行い, ひとつの三次元形状データを作り出しているが, 必要とされる計測精度の範囲内で測定ピッチを考慮する必要があると考えられた
  • 有元 通敏, 鈴木 佳, 滝 佳弘, 高橋 好文
    p. 47
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    近年歯牙欠損における補綴処置としてインプラントが用いられることがしばしばある. その快適さから今後さらに多くの症例でインプラントが用いられることが予想される. このため周囲骨組織, インプラント体に応力集中が起こりにくく, 長期にわたり使用することができるフィクスチャー形状を知ることが重要だと考えられる. 当教室では新しいフィクスチャー形状としてADSインプラントを開発した. このインプラントのフィクスチャーには多数のディンプルが付与されており, フィクスチャー形状により周囲骨組織への力の伝わりかたに違いがあると考えられている. 本研究では, 二次元有限要素法を用いてADSインプラントとスクリュータイプインプラントを界面が骨結合, 骨接合の2条件で斜め上方からの荷重に対し応力解析の検討を試みた.
    ADSインプラントはスクリュータイプインプラントに比べσMの最大値が骨結合では74.83%, 骨接合では77.73%になっていた。またこれを主応力(σ2)で見ると, 骨結合では89.09%, 骨接合では116.69%になっていた. このことからADSインプラントにはスクリュータイプインプラントに比べ小さな等価応力, 主応力, 剪断応力(τ)しか生じていないことが示唆された.
  • その5 切削時の振動解析
    岡本 武司, 岩堀 正俊, 山内 六男, 長澤 亨
    p. 48
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    われわれはこれまでに, いわゆる“5倍速コントラアングルハンドピース”に関する実験を行い, 切削荷重1), 切削面の表面性状2, 支台歯形成面の評価および切削感に関するアンケート調査3)および切削時間および上肢の筋の筋活動への影響4)などについて検討した. アンケート結果3)から, 5倍速コントラアングルハンドピースは支台歯形成面の表面粗さがわずかに増加するものの, うねりのない形成面を得やすく切削感もエアータービンと比較して問題ないが, 重量が大きく, 振動も大きいといった声も聞かれた. そこで前報4)では, 筋電図により検討したところ, 支台歯形成時に5倍速コントラアングルハンドピースではエアータービンより力を入れて形成していることが明らかとなった. 今回は, 3報および4報の結果から, 切削時の手指を計測解析した.
  • 小澤 正明, 小森山 学, 福井 寿男, 河野 篤, 平野 進
    p. 49
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    歯に修復処置を行った後の修復物や、歯との界面の観察を行う際に種々の方法が用いられているが、その多くは修復物内部の観察を行うために試料を切断しなければならず、試料作製にも労力を要するものが多い。もし試料を切断せずに破壊することなく観察を行うことが可能ならば、修復物や歯の連続的な評価も可能ではないかと考え、マイクロCT装置の応用を試みた。そこで今回は本装置を利用した場合、歯に充填した接着性修復物に対してどのような情報が得られるのか画像データによる観察を行った。
    以上の結果より、マイクロフォーカスX線CT装置を用いて、短時間で非破壊的に修復物の観察が行えた。また、試料の連続的な観察も可能と考えられる。
  • 高橋 好文, 田中 宏憲, 有元 通敏, 東 分吉, 柳楽 英樹, 篠田 耕伸
    p. 50
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    一般にインプラント界面と周囲組織の観察は未脱灰組織切片が主であるが, フィクスチャーの長さが8∼12mmと小さいこと, 最初の切片の切り出しが100∼150μmであること, さらに切断に使用する刃の厚みが数100μmあることなど, 得られる切片の枚数が制限される. それに反して, X線による観察は非破壊で行われるため, 全体像あるいは連続的観察が可能などの利点を有するが, メタルアーチファクトを生じるために界面の観察が困難であることが考えられる. 今回, 未脱灰切片作製の前段階として, マイクロ-CTによるインプラント界面と周囲組織の観察を試みた
    μ-CTはインプラント界面の観察に有用であるが, より詳細な観察を行なうためにはメタルアーチファクトの除去が望まれる.
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