背景.ブラは肺癌発生の危険因子とされている.今回我々は左右のブラ壁に異時性に異なる組織型の肺癌を生じた症例を経験したので報告する.症例.50歳,男性.43歳の時,右上葉ブラ壁に発生した肺扁平上皮癌に対して右上葉切除術(pT1N0M0,Stage IA)を受けた.当時より左上葉のブラを指摘されていた.術後の経過観察中に胸部X線写真で左上肺野に腫瘤がみられた.胸部CTでは左上葉ブラ壁に数珠状に連なる腫瘤影があり,少量の液体貯留がみられた.左肺上葉切除術を施行し,病理診断は肺腺癌(pT2N0M0,Stage IB)だった.結論.ブラが存在する症例では肺癌が発症する可能性が高いことを念頭に入れた定期的な経過観察が必要と考えられた.