肺癌
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第23回日本肺癌学会肺癌ワークショップ
網羅的発現解析による肺癌の分子病態理解と新規治療標的分子の探索
醍醐 弥太郎中村 祐輔
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 49 巻 6 号 p. 917-927

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抄録

ゲノミクス·プロテオミクスに代表されるオミックス研究の進展により,ゲノムワイドな遺伝子やタンパク質の発現レベルの変化に基づき発癌機構の全体像をより網羅的に把握することが可能となっている.我々は独自に構築したcDNAマイクロアレイシステムを用いて肺癌101症例の遺伝子発現プロファイル解析を行い,さらに肺癌900症例を網羅する組織マイクロアレイシステム,siRNAによる癌細胞での遺伝子発現阻害実験,500症例の肺癌患者血清を迅速解析する血清ELISAおよび血清タンパク質上の癌特異的な糖鎖構造変化を網羅的に同定する質量分析システムを併用して,肺癌において癌特異的に発現するoncoantigenを複数同定し,その発癌に関わる未知分子経路を解明してきた.さらにこれらを標的とした新規バイオマーカーと低分子薬,抗体医薬,核酸·ペプチド医薬や癌ワクチンの開発を進めている.ゲノムワイドな遺伝子·タンパク質の発現情報に基づいた肺癌の分子病態理解と新規の診断·治療法の開発に向けた取り組みを概説する.

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© 2009 日本肺癌学会
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