肺癌
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原著
高齢化社会における臨床病期 I 期肺癌の現状と問題点
安藤 克利庄司 一寅深澤 基児武士 昭彦阿部 大松沼 亮浅井 信博三沢 昌史金子 教宏
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キーワード: 肺癌, 併存疾患, 高齢者
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 50 巻 2 号 p. 115-121

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抄録

背景と目的.今後訪れる高齢化社会での臨床病期I期肺癌に対する問題点や解決策を浮き彫りにするため,既に高齢化社会の医療圏にある亀田総合病院で臨床病期I期肺癌と診断された患者の背景や臨床像について検討を行った.方法.1999年10月から2008年9月までに当院で臨床病期I期肺癌と診断された358例を対象に,75歳以上の後期高齢者群,65~74歳の前期高齢者群と非高齢者群(64歳以下)の3群に分け,臨床像や治療法について比較検討した.結果.後期高齢者群は全体の30%以上を占めていたが,手術施行例は59.5%に留まっていた.後期高齢者群の非手術施行例は手術施行例と比較して,COPD,心疾患,腎疾患などの併存疾患を多く有し,低肺機能の傾向にあった.非手術施行例は放射線治療(定位放射線治療,従来型放射線治療)もしくはBSCを選択していたが,定位放射線治療施行例は手術施行例と生存率に有意差を認めなかった.結語.今後訪れる高齢化社会では様々な併存疾患を有する肺癌患者が増加し,外科治療を施行できない症例が数多く存在することが予想される.併存疾患は,手術施行困難である要因の一つと考えられたが,定位放射線治療など局所治療の開発により,臨床病期I期肺癌の予後改善が期待される.併存疾患を含めた臨床像の評価方法,高齢者に対する具体的手術適応の確立,そして局所治療の普及が今後の課題になると考えられた.

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© 2010 日本肺癌学会
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