抄録
目的.EGFR-TKI中止後の急激な病勢増悪(disease flare)の実態を明らかにする.対象および方法.過去10年間に当科でEGFR-TKIで加療を行ったEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌61例中,EGFR-TKI中止後の経過を観察し得た45例を後ろ向きに検討した.Disease flareの定義は,EGFR-TKI中止後1ヶ月以内に死亡または次の治療が困難となる病勢の増悪と定義した.結果.Disease flareは45例中5例(11.1%)に認め,うちdisease flareで癌性髄膜炎を発症した1例のみ(20%)が死亡した.EGFR-TKI中止後からdisease flareまでの期間中央値は12日(5~29日)であった.Disease flare発症群と非発症群の全生存期間(OS)中央値はそれぞれ679日,952日であった.結語.Disease flareによる癌性髄膜炎発症には注意すべきである.今後の臨床試験の結果を待ち,disease flareを踏まえた治療戦略を確立する必要がある.