抄録
体幹部定位放射線治療は,手術不能もしくは手術困難なI期非小細胞肺癌に対する治療オプションとして認められつつあり,特に近年増加している高齢癌患者のニーズにマッチしている.肺機能に関して治療後の一秒量変化は軽微であり,それ自体は治療適応に影響しないとの報告が多いが,間質性肺炎が併存する場合には治療後の重篤な放射線肺臓炎の頻度が高いとされる.また,中枢側存在型肺癌においては致死的な有害事象が報告されており,適応には慎重を要する.国内外で実施された多施設共同前向き臨床試験の結果を見ると,局所制御率は約90%,手術不能症例における3年全生存は約60%と見込まれる.今後も治療成績の向上ならびに有害事象の低減,治療適応の拡大を目指したエビデンスの蓄積を進めるとともに,新規の技術開発を継続して行っていくことが求められる.