肺癌
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54 巻, 6 号
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原著
  • 磯部 和順, 秦 美暢, 鏑木 教平, 坂本 晋, 高井 雄二郎, 栃木 直文, 伊豫田 明, 本間 栄
    2014 年 54 巻 6 号 p. 761-766
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)合併肺癌に対する2nd line化学療法の有用性,および抗癌剤関連急性呼吸障害の実態を明らかにする.対象および方法.2004年4月~2013年4月に化学療法を施行したIP合併肺癌80例中,2nd line化学療法を施行した44例を対象とし,患者背景,治療レジメン,抗癌剤関連急性呼吸障害の頻度をretrospectiveに検討した.結果.抗癌剤関連急性呼吸障害を8例(18.2%)に認め,5/8例(62.5%)が死亡した.2nd lineにおける抗癌剤関連急性呼吸障害の頻度は1st lineの頻度(8/80例,10%)と比較すると高い傾向にあった.2nd line化学療法の奏効率,無増悪生存期間(中央値)は,小細胞肺癌で0%,1.4ヶ月,非小細胞肺癌で3%,1.8ヶ月であった.結語.IP合併肺癌における2nd line化学療法は抗癌剤関連急性呼吸障害が1st lineと同様に認められ,臨床効果が乏しいことから,リスクとベネフィットを考え慎重に施行すべきである.
  • 藤本 伸一, 青江 啓介, 大泉 聡史, 上月 稔幸, 亀井 敏昭, 三浦 溥太郎, 井内 康輝, 岸本 卓巳
    2014 年 54 巻 6 号 p. 767-771
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.胸膜中皮腫の鑑別診断における胸水ヒアルロン酸の有用性を明らかにする.方法.診療録より胸水ヒアルロン酸濃度を抽出し比較検討を行った.結果.計860例分の胸水ヒアルロン酸濃度が抽出された.疾患の内訳は胸膜中皮腫139例,良性石綿胸水76例,肺癌324例,他臓器の悪性腫瘍74例,感染性胸膜炎120例,膠原病11例,その他116例であり,ヒアルロン酸濃度の中央値は胸膜中皮腫76,650 ng/ml,良性石綿胸水28,000 ng/ml,肺癌19,000 ng/ml,他臓器の悪性腫瘍12,200 ng/ml,感染性胸膜炎23,400 ng/ml,膠原病17,800 ng/ml,その他11,575 ng/mlであった.胸膜中皮腫における胸水ヒアルロン酸濃度はその他の疾患に比べ有意に高値であり,カットオフ値を100,000 ng/mlとしたところ,胸膜中皮腫の診断における感度は44.5%,特異度は98.2%であった.結論.胸水中のヒアルロン酸濃度は,胸膜中皮腫の鑑別診断の一助となり得る.
症例
  • 前田 篤史, 岩田 隆, 戸田 道仁, 上松 正朗, 渡部 徹也, 藤田 雅史
    2014 年 54 巻 6 号 p. 772-777
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.悪性腫瘍の心臓(心筋)転移は生前に診断されることは稀である.今回我々は生前に心電図や心エコーにより悪性腫瘍の心筋転移を診断し,剖検によって確認した症例を経験したので報告する.症例.75歳女性.悪性リンパ腫,両側原発性肺癌,直腸癌など同時四重複癌に対してそれぞれ化学療法,両側肺切除術および術後補助化学療法,直腸切除術の治療を行った.その後右肺癌によると思われる肺門部リンパ節再発を来したため放射線治療を行い,その後緩和治療となっていた.間質性肺炎を合併しており以前から呼吸苦はあったが,その増悪を訴えられ外来受診.胸部X線像上心陰影の拡大を認め精査加療目的に入院となった.心電図にてV2-3のST上昇,心臓超音波検査にて前壁から側壁に多発する低エコー領域を認め心筋転移と診断された.強心剤や利尿薬などの投与を行ったが入院後5日目に死亡された.病理解剖にて心臓超音波検査での低エコー領域に一致して心筋内に腫瘍の浸潤を認め,病理組織検査にて右肺腺癌の転移と確定診断された.結論.生前に診断された稀な心筋転移の1例を経験した.
  • 三田村 侑季, 磯部 和順, 伊藤 貴文, 大塚 創, 栃木 直文, 本間 栄
    2014 年 54 巻 6 号 p. 778-783
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.蜂巣肺は主に進行期の特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)で認められる.症例.症例は63歳男性,胸部CTにて右下葉に蜂巣肺様陰影を認め当院受診となった.画像所見およびKL-6上昇より,IPFが疑われた.片側の蜂巣肺様陰影であったため,他疾患の鑑別を目的に気管支鏡検査を施行したが悪性ならびに炎症所見は得られなかった.その後,非典型的IPFとして経過観察していたが,6か月後の胸部CTにて蜂巣肺様陰影内の結節影が増大したため,IPF合併肺癌を疑い右肺下葉切除と縦隔肺門リンパ節郭清術を施行した.切除検体では,CT画像にて右下葉の結節に相当する部分に間質の線維化を伴う腺癌細胞の増生を認めた.一方蜂巣肺様陰影に相当する部分は,既存の気腫性病変に高分化腺癌が間質の線維化を伴いつつ,肺胞上皮置換性に増殖していた.肺胞の虚脱と筋組織増生を伴う通常型間質性肺炎の所見は認められなかった.結語.既存の気腫性病変に高分化腺癌を合併すると,CT画像にてIPF類似の蜂巣肺様陰影を呈する場合があり注意が必要である.
  • 喜多 秀文, 藤田 敦, 中里 宜正, 白石 裕治, 吉田 勤, 下田 清美
    2014 年 54 巻 6 号 p. 784-789
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌の小腸転移は非常に予後が不良であり,長期生存を成し得た症例は極めて稀である.今回我々は肺癌術後に小腸転移をきたした症例に対して外科的切除を施行し,長期生存が得られた症例を報告する.症例.68歳,男性.左上葉切除術を施行し,最終病理検査結果にてT1bN1M0,Stage IIAの肺多形癌と診断された.肺癌術後6カ月後に血便と貧血を認めた.腹部CT所見にて腸重積を認め,小腸内視鏡検査にて空腸腫瘍と診断され,小腸部分切除術を施行した.病理検査にて肺癌の転移腫瘍と診断されたため,プラチナダブレットによる化学療法を4クール施行した.小腸転移腫瘍切除後4年9カ月経過したが無再発生存中である.結論.小腸転移病変の外科的切除後の予後は極めて不良であるが,病変の外科的切除によりquality of life(QOL)の改善と,極めて稀に長期生存した報告もある.したがって小腸転移の治療については,外科的治療の可能性を積極的に検討するべきであると思われた.
  • Mitsuru Yoshino, Yasuo Sekine, Eitetsu Koh, Atsushi Hata, Hideki Katsu ...
    2014 年 54 巻 6 号 p. 790-794
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    Background. It is difficult to distinguish the development of granuloma along the staple line after segmentectomy from tumor recurrence. Case. A 70-year-old male underwent left S8 segmentectomy with lymph node dissection for early stage IA lung adenocarcinoma using video-assisted thoracic surgery. One year later, a routine chest CT scan disclosed a mass adjacent to the previous segmentectomy site. Although local recurrence of lung cancer was suspected, a bronchoscopic examination showed no recurrence, and the results of a bacteriological examination were nonspecific. Steroid therapy was therefore initiated based on our concern for the potential of organizing pneumonia. The mass lesion subsequently shrank in size, almost disappearing. Interval chest CT, however, demonstrated regrowth of the site of consolidation along the staple line. The steroid therapy was repeated; however, the area of consolidation continued to grow. Completion left lower lobectomy was thus performed, as the possibility of local cancer recurrence could not be excluded. At the time of thoracotomy, a hard white mass was palpated along the staple line in the left lower lobe. A pathological analysis revealed epithelioid granuloma with caseating necrosis, and Mycobacterium avium complex (MAC) grew from a culture of the specimen. Therefore, the lesion was thought to be a granuloma caused by MAC infection at the previous segmentectomy staple line. Conclusions. We herein report a rare case of pulmonary granuloma associated with non-tuberculous mycobacteriosis occurring at the staple line after segmentectomy for lung cancer. In addition to local recurrence or secondary primary lung cancer, the possibility of mycobacterial granuloma should be considered in cases in which pulmonary nodules are detected on the staple line after pulmonary resection.
  • 河本 宏昭, 上野 剛, 末久 弘, 澤田 茂樹, 山下 素弘, 高畑 浩之
    2014 年 54 巻 6 号 p. 795-799
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌肉腫は,癌腫と悪性の軟骨,骨,骨格筋のような異所性成分を含む肉腫との混在からなる,稀な悪性腫瘍である.症例.71歳,男性.夜間喘鳴で発症した.胸部CTにて右下葉に5.5 cm大の腫瘤影を認めたが,気管支鏡では確定診断に至らなかった.肺癌の疑いで右下葉切除および縦隔リンパ節郭清を行った.病理検査では軟骨,類骨を伴う肉腫様成分と扁平上皮癌,胎児型腺癌様の成分の混在する肺癌肉腫であった.術後は2年3ヵ月無再発生存中である.結論.癌肉腫は進行が早く予後も不良な疾患であるが,外科的完全切除後には長期生存例が少なからず存在する.肺癌肉腫に対する手術適応と化学療法については,さらなる検討が必要である.
  • 宮田 亮, 喜夛村 次郎, 河野 朋哉, 野口 哲男, 黒澤 学, 田久保 康隆
    2014 年 54 巻 6 号 p. 800-805
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺性肥大性骨関節症は,ばち状指,長管骨の骨膜新生,関節炎を三徴とする,腫瘍随伴症候群の一つである.症例.49歳,男性.前医で両膝関節痛の対症療法を受け,経過観察されていた.6か月後の胸部単純X線写真で腫瘤を指摘され,精査で非小細胞肺癌の診断が得られた.ばち状指,関節痛に伴う運動障害,骨シンチグラフィで長管骨に両側対称性の取り込みが認められることから,肺性肥大性骨関節症と診断された.対側縦隔リンパ節転移が疑われたが,急速成長を示す腫瘍による有害事象を回避する目的で姑息的に右肺上葉切除術が行われた.術後診断は肺扁平上皮癌(pT3N3M0,c-stage IIIB)であった.関節痛は術後1日目に消失し,腫瘍切除が症状改善に強く関連しているものと考えられた.本症例で摘出肺の腫瘍細胞の免疫組織化学染色では,VEGF-A(vascular endothelial growth factor-A)陽性で,血清中のVEGF-A濃度は術後3週間で基準値内に低下した.術後化学療法と放射線治療を追加し,治療開始後20か月の現在,症状の再発なく生存中である.
  • 矢島 剛洋, 神宮 大輔, 生方 智, 渡辺 洋
    2014 年 54 巻 6 号 p. 806-811
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.癌性髄膜炎に対してゲフィチニブからエルロチニブへの変更が奏効し,かつ,用量依存性の効果が見られた症例を経験したので報告する.症例.68歳女性,非喫煙者.肺腺癌cT1bN3M1b,EGFR遺伝子変異陽性(Exon 21:L858R)であり,初回治療としてゲフィチニブが投与されPRで経過していた.投与開始10ヶ月目よりCEA増加傾向が見られたがPDと判定する病変はなく,ゲフィチニブが継続されていた.12ヶ月目に頭痛,嘔吐,食欲不振があり入院した.髄液検査ではCEA増加はなく細胞診は陰性だったが,蛋白上昇,糖低下が見られた.頭部MRIで左基底核に脳転移,脳表の高信号所見があり,総合的に癌性髄膜炎と判断した.エルロチニブ150 mgに変更したところ速やかに症状は軽快し,CEAも減少した.しかし,重度の皮疹のためエルロチニブを100 mgに減量したところ,頭痛などの症状は増悪し,CEAも再び増加した.エルロチニブを100→125→150 mgと漸増したところ自覚症状やCEAは改善した.結論.ゲフィチニブ耐性後でもエルロチニブを十分量投与することで,癌性髄膜炎に対する治療効果が期待される可能性が示唆された.
  • 豊田 行英, 藤原 大樹, 飯田 智彦, 廣島 健三, 澤田 達男, 柴 光年
    2014 年 54 巻 6 号 p. 812-816
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.富細胞性神経鞘腫は,組織学的に細胞密度の高いAntoni Aの組織を主体とした腫瘍である.症例.65歳女性.主訴は腰痛.胸部CTで右肋骨横隔洞に局在する12 cm大の巨大腫瘤影を認めた.FDG-PETでFDG高度異常集積を認めたため悪性腫瘍を疑われ,腫瘍摘出術を施行された.腫瘍は表面平滑で被膜に包まれ,椎体と下行大動脈に強く固着していた.組織学的に,紡錐形細胞が密に増殖し,一部にfoamy macrophageの集簇を認めた.免疫染色はS-100蛋白陽性,Ki-67標識率は低値であり,富細胞性神経鞘腫と診断した.結論.肋骨横隔洞に発生した巨大富細胞性神経鞘腫の1例を報告した.細胞密度が高い本症例では,FDG-PETでの高度集積を認め,軟部腫瘍系の悪性腫瘍との鑑別を要した.
第28回日本肺癌学会ワークショップ
  • 西井 研治
    2014 年 54 巻 6 号 p. 817-820
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌死亡率の減少のためには,肺癌の早期発見が極めて重要である.肺癌検診を行っていない米国では,発見される肺癌の約60%は進行癌である.一方わが国では,X線検診で多くの早期肺癌が見つかっている.早期癌の5年生存率は83.2%と高率で,死亡率減少効果も,わが国で行われた複数の症例対照研究で証明されている.しかし,肺癌検診の受診率は年々低下しており,早期で発見される症例数も減少している.また,肺門部肺癌の発見目的で行われている喀痰細胞診も,受診者の減少によって発見率の低下が認められている.さらに早期の肺癌を効率よく発見する目的で低線量CT検診が期待されているが,国の施策として実施するためには,死亡率減少効果を証明する必要がある.
  • 松尾 幸憲
    2014 年 54 巻 6 号 p. 821-824
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    体幹部定位放射線治療は,手術不能もしくは手術困難なI期非小細胞肺癌に対する治療オプションとして認められつつあり,特に近年増加している高齢癌患者のニーズにマッチしている.肺機能に関して治療後の一秒量変化は軽微であり,それ自体は治療適応に影響しないとの報告が多いが,間質性肺炎が併存する場合には治療後の重篤な放射線肺臓炎の頻度が高いとされる.また,中枢側存在型肺癌においては致死的な有害事象が報告されており,適応には慎重を要する.国内外で実施された多施設共同前向き臨床試験の結果を見ると,局所制御率は約90%,手術不能症例における3年全生存は約60%と見込まれる.今後も治療成績の向上ならびに有害事象の低減,治療適応の拡大を目指したエビデンスの蓄積を進めるとともに,新規の技術開発を継続して行っていくことが求められる.
  • 中村 廣繁, 谷口 雄司, 三和 健, 春木 朋広
    2014 年 54 巻 6 号 p. 825-830
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.手術支援ロボットの普及が進む中で呼吸器外科領域における有用性の検証が求められている.肺癌に対するロボット手術の現状と展望を紹介する.対象と方法.文献的報告と著者らのロボット手術の経験を解析して肺癌に対するロボット手術の有用性と問題点を検証する.結果.ロボット手術の最大の利点は,3次元視野下に関節を有する自由度の高い鉗子を用いて巧みな手術操作ができるところである.これらの利点は胸腔鏡手術の弱点を補い,複雑な手術を容易にし,精緻な手術を可能にしてくれる.肺癌に対するロボット手術は現在までのところ初期成績は安全に導入され,有用な結果が示されている.今後の技術向上とともに,さらなる安全性と有効性が期待される.結論.呼吸器外科領域でロボット手術の有用性を示すエビデンスはいまだに明らかにされていないが,肺癌に対するロボット手術は胸腔鏡手術の弱点を補い,今後有用性を示すデータが蓄積されていくだろう.現在先進医療,保険収載に向けての準備が急がれている.
  • 大平 達夫, 池田 徳彦
    2014 年 54 巻 6 号 p. 831-834
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.中心型早期肺癌の多くに気管支鏡的治療が適応されるようになり,その診断が一層重要になってきた.しかし平坦型の症例で粘膜の変化が軽微な場合は,通常の気管支鏡で発見が困難なことが多い.これらの病変をより早期に診断することが臨床的に望まれている.方法.自家蛍光気管支鏡(AFB)の気管支早期病変に対する臨床上の有用性を,過去に報告された研究と自験例を用いて評価した.結果.中心型肺癌のうち,進行癌に対しては通常の気管支鏡とAFBでは感度の差がないと考えられる.一方,早期癌および異型扁平上皮などの病変に関しては,AFBは高い感度を示し,診断率の向上に寄与すると認識される.同時に病変の粘膜浸潤範囲の把握も容易であり,気管支鏡的治療の際の支援になることが示唆された.結論.中心型肺癌の診断と治療に際しては,通常の気管支鏡にAFBを併用することが有用である.
  • 佐藤 雅昭
    2014 年 54 巻 6 号 p. 835-842
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    Ground glass opacity(GGO)病変に代表される触知困難小型病変の術中同定は,呼吸器外科の大きな課題である.これまで様々な方法が報告されてきたが一長一短である.超音波やEndofingerは侵襲が皆無だが,GGO病変をどれほど正確に同定できるか疑問が残る.CTガイド下に経皮的に針を刺す術前マーキング法としてhook wire留置,色素注入,リピオドール®注入などが報告されている.比較的簡便な一方,穿刺可能部位が制限されること,気胸や器具脱落(hook wire),致命的となりうる空気塞栓の懸念がある.経気管支的なマーキング法として,色素,バリウム,リピオドールなどの注入が報告されている.比較的安全な方法と思われるが,CTガイド下に行うにはセッティングに手間がかかること,術者被曝が多くなることなどが欠点である.最近のバーチャル気管支鏡の進歩はこれらの欠点を補う可能性がある.われわれが最近報告したvirtual-assisted lung mapping(VAL-MAP)法はこの延長上にあるといえ,複数の標的部位にバーチャル気管支鏡ガイド下に透視下,気管支鏡下に色素を注入し,肺表面に「地理情報」を与える.病変同定というマーキングの概念を抜け出し,肺部分切除や複雑な区域切除で精密な切離ラインの設定を可能ならしめる,呼吸器外科領域の術中ナビゲーションとしての役割が期待される.
  • 浅野 文祐
    2014 年 54 巻 6 号 p. 843-847
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    肺末梢病変の確定診断として経気管支生検は,経皮生検より合併症が少ないが,診断率が低く,気管支鏡や生検器具を病変に誘導することが重要である.仮想気管支鏡ナビゲーション(virtual bronchoscopic navigation,VBN)は,末梢病変への気管支ルートの仮想気管支鏡画像を使って,直視下に気管支鏡を誘導する方法で,専用のシステムが市販されている.VBNはCTガイド下極細径気管支鏡検査,ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS),X線透視および非X線透視下気管支鏡と併用され,肺末梢病変に対する診断率は74%,2 cm以下の病変では67.5%と報告されている.ランダム化比較試験において,EBUS-GSとの組み合わせでVBNは診断率を向上させること,X線透視下極細径気管支鏡では,サブクラス解析で右上葉,肺野外層に位置する,X線透視で見えない病変で診断率を向上させることが示された.VBNの診断率を上げるためは,CTで病変と仮想気管支鏡像の基となる抽出された気管支の関係を把握し,適切な気管支鏡検査手技と組み合わせることが大切である.VBNは気管支鏡検査をサポートする有用な方法であり,さらなる普及とシステムの進化が望まれる.
  • 金澤 右, 平木 隆夫
    2014 年 54 巻 6 号 p. 848-853
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.肺悪性腫瘍に対する経皮的CTガイド下ラジオ波焼灼療法は,2000年に開始された新たな局所治療である.本治療のI期非小細胞肺癌への有効性について検討する.また,本治療の原理,特殊性,適応,治療の実際などについて俯瞰的にまとめる.研究計画.我々の施設におけるI期非小細胞肺癌50例52腫瘍(IA 38例,IB 12例)について後方視的に検討し,同治療の世界的な成績についてもまとめた.結果.経過観察期間中央値は37か月であった.腫瘍の局所再発率は31%(16/52)であった.全生存率,疾患特異的生存率ならびに無疾患生存率は,各々1年で94%,100%ならびに82%,2年で86%,93%ならびに64%,3年で74%,80%ならびに53%であった.治療はすべて局所麻酔下で行われ,入院期間も短く,副作用も少ないため,優れた低侵襲治療といえるが,一方では2 cmを超える腫瘍では再発率が高いことが示されている.結論.現在までに十分なランダム化比較試験は報告されておらず,後ろ向きコーホート研究のデータを主体にその治療成績に言及せざるを得ない状況にあるが,ラジオ波焼灼療法が施行された多くの患者は,様々な理由で手術ができない背景を抱えており,そのような患者については手術の代替治療になり得る可能性があると思われる.
  • 久保 武
    2014 年 54 巻 6 号 p. 854-861
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    早期肺癌は,日本の取扱い規約上,中枢型扁平上皮癌に対して定義されているが,頻度の高い末梢型腺癌には定義されていない.野口らにより,小型肺癌の予後良好群として組織学的にlocalized bronchioloalveolar carcinomaを示すものがあり,特に活動性線維芽細胞増生のないものは極めて予後良好であることが示され,早期肺癌に相当するものと考えられる.これらは画像的に経時的変化の乏しい,すりガラス状結節あるいは部分的に充実性のすりガラス状結節で,subsolid nodule(SSN)と総称される.SSNはCTの普及により発見頻度が増えており,しばしば多発する.Fleischner Societyによる2013年のrecommendationはSSNを単発,多発に分け,各々に対し推奨される取扱いを提示している.SSN治療方針の信頼度の高いエビデンスは少ないが,Fleischner Societyが標準的方針を示したことは,日常臨床での意思決定に有用と考えられる.本稿ではSSNの画像所見と,SSNに対するFleischner Societyの推奨を中心に解説する.
  • 岩﨑 正之, 増田 良太
    2014 年 54 巻 6 号 p. 862-865
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国は超高齢化社会の到来で高齢者の肺癌患者が増加している.加えて検診の広がりによる早期肺癌患者の発見が増加する中で,益々侵襲の少ない手術が求められてきている.いわゆる縮小手術が表舞台に登場することになった.元々肺癌に対する胸腔鏡手術は胸腔内へのアクセスが異なるだけで,胸腔内手術操作は従来の手術と同等に行われる.しかしながら術者が直接組織に触れることなく,ビデオモニターのみを見て行う胸腔鏡手術は,従来の手術の概念を大きく超えた新しい手術法であり,質の異なった手術であると言える.胸腔鏡手術は身体的な負担が少なく,社会復帰するまでに必要な時間が短く,美容にも優れた手術方法である.しかしながら一歩間違えると大きな事故になり得る手術手技のために,日頃からの弛まぬ学習とトレーニングが必要である.より良い器具を用いてより良い環境で手術が遂行できるように様々な取り組みがなされており,あらゆる機会を利用してより新しい,より安全な胸腔鏡手術の習得がわれわれ呼吸器外科医に求められている.
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