肺癌
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症例
ステントグラフト内挿術により切除可能であった大動脈浸潤肺癌の1例
小林 零永山 加奈高橋 保博川野 亮二数野 圭村田 聖一郎
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 56 巻 4 号 p. 303-307

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抄録

背景.過去の報告によると,大動脈合併切除術はmortality 12.5%,morbidity 31%と周術期リスクが高いものの,リンパ節転移がない症例であれば5年生存率が70%であるといわれている.周術期リスク軽減が可能であれば,大動脈浸潤肺癌に対する大動脈合併切除は有望な治療法とも考えられる.症例.76歳男性.左上葉に径3.2×3.0 cm大動脈弓部および後縦隔に接する腫瘤影を認めた.全身精査の結果,扁平上皮癌cT4N0M0 stage IIIAと診断された.審査胸腔鏡により大動脈浸潤を確認したのち,ステントグラフト留置術を施行した.留置3週間後に左肺上葉切除術+大動脈合併切除を施行し,術後10日目に退院した.最終病理結果では,moderately differentiated squamous cell carcinoma,E0,D0,Pl3,PM0,pT4N0M0であった.大動脈外膜までの肺癌浸潤が存在したが,完全切除が確認された.結論.ステントグラフトを術前に大動脈内に留置することで,大動脈浸潤肺癌に対する根治術を安全に施行可能であった.

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© 2016 日本肺癌学会
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