肺癌
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症例
アレクチニブ中止後に急速に増悪し,クリゾチニブが著効したALK陽性肺腺癌の1例
倉重 理絵坂下 博之東 盛志内堀 健木原 淳稲瀬 直彦
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2016 年 56 巻 4 号 p. 308-313

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抄録

背景.本邦では肺癌治療においてALK阻害剤2剤が使用可能であるが,その耐性化が問題となっている.症例は37歳,女性.肺腺癌,cT2aN3M0,Stage IIIB,ALK転座陽性の診断で,アレクチニブを開始した.約4か月半PRを維持したが,PDとなったためシスプラチンとペメトレキセドによる化学療法に切り替えた.Day 16より発熱,CRP上昇,急速なリンパ節の増大を認めた.アレクチニブを再投与したところ一部のリンパ節や肝転移は縮小したが,他のリンパ節は増大した.右鎖骨上リンパ節で行った再生検組織では,診断時の肺生検組織と比較して,ALK陽性癌細胞のうちMET増幅が陽性の細胞の割合が増加していた.クリゾチニブに変更したところ,すべての病変が縮小し,PRを得た.結論.本症例はアレクチニブ中止に伴いdisease flare様の経過を呈した.アレクチニブ再投与下で増大を認めた腫瘍部位では,MET増幅が耐性メカニズムであった可能性もある.耐性獲得の機序についてさらなる研究が望まれる.

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© 2016 日本肺癌学会
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