肺癌
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症例
広範な脊柱管内浸潤を呈した悪性胸膜中皮腫の1例
神山 潤二横井 英人和田 裕紀子伊藤 浩町田 和彦松尾 正樹
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2016 年 56 巻 7 号 p. 1022-1027

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抄録

背景.悪性胸膜中皮腫は局所浸潤傾向が強く,隣接臓器に進展するが,脊柱管内へ浸潤することは稀である.症例.69歳,男性.2007年5月に胸部単純X線写真で異常を指摘され,右悪性胸膜中皮腫(上皮型)と診断された.抗癌剤治療や温熱療法などを実施されたが,右胸背部痛の増悪と下肢脱力の出現があり,2014年9月に入院となった.入院後に両下肢対麻痺と膀胱直腸障害が出現した.脊椎MRIでは,Th8/9椎間孔を介して,頚部から腰部にわたって硬膜外腔へ浸潤した腫瘍が認められた.ステロイド投与によって一時的に神経症状は改善したが,およそ2ヶ月の経過で,腫瘍の進行による呼吸不全で死亡した.病理解剖では,悪性胸膜中皮腫が硬膜外腔および脊髄硬膜へ広範に浸潤している所見が得られた.結論.悪性胸膜中皮腫は椎間孔を介して脊柱管内へ浸潤し得る.悪性胸膜中皮腫患者が放散痛,麻痺やしびれなどの神経根症状を呈した際には,腫瘍の脊柱管内浸潤を考慮すべきである.

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© 2016 日本肺癌学会
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