肺癌
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症例
髄膜癌腫症により両側進行性感音性難聴を呈した肺腺癌の1例
増野 智章矢部 道俊藤崎 秀明重永 武彦門田 淳一
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キーワード: 肺癌, 髄膜癌腫症, 聴神経, 難聴
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 59 巻 7 号 p. 1177-1183

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抄録

背景.髄膜癌腫症は悪性腫瘍が髄膜へ播種することにより発症する予後不良な疾患であり,多彩な神経症状を呈する.症例.65歳,男性.肺腺癌cT2aN3M0,stage IIIBに対して化学放射線療法が施行されたが,その後リンパ節転移にて再発したため化学療法を再開された.しかし,治療経過中に右難聴が出現し,頭部造影MRIにて右聴神経腫瘍が疑われた.右難聴出現から5ヶ月後には左聴神経にも腫瘍が疑われ,フォローアップMRIにて両側の聴神経腫瘍は経時的に増大傾向を認めた.肺腺癌に対して化学療法を継続されたが,右難聴出現から12ヶ月後には両側難聴は著しく進行し,同時に左顔面神経麻痺を認めた.髄液検査所見では癌性髄膜炎が示唆された.患者はその3ヶ月後,癌性リンパ管症にて死亡した.病理解剖にて両側聴神経への腺癌細胞の浸潤を認め,髄膜癌腫症による肺腺癌の内耳道内播種と診断された.結論.進行肺癌患者の治療経過中に難聴が出現した場合は,髄膜癌腫症の可能性を考慮する必要がある.

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© 2019 日本肺癌学会
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