2020 年 60 巻 1 号 p. 27-32
症例.69歳男性.61歳時に房室ブロックに対してペースメーカー植え込み術が行われ,その後左上葉の心臓ペースメーカー背側に陰影が出現し,気管支鏡検査で小細胞肺癌と判明した.臨床病期IIIBの限局型小細胞肺癌であり化学放射線療法の適応と考えられたが,ペースメーカー背側に腫瘍が存在していたためシスプラチン+エトポシドによる化学療法を1コース先行後,リード線は残したまま左前胸部のペースメーカーを抜去し対側へ新たにペーシングシステムを挿入し,化学放射線療法を施行した.合計4コースの化学療法を行い,寛解が得られ,以後再燃なく経過している.ペースメーカー装着肺癌患者への放射線療法において,ペースメーカーに放射線が直接照射された場合,リセットやオーバーセンシングなどの動作異常が生じることが知られており,放射線療法を行うことは困難である.結論.本症例はペースメーカー背側に腫瘍を認めたが,対側に新たにペーシングシステムを挿入することで化学放射線療法を行い,寛解に至ることが可能であった.