肺癌
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60 巻, 1 号
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総説
  • 桐田 圭輔, 酒井 徹也, 内藤 智之, 宇田川 響, 後藤 功一
    2020 年 60 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    肺癌診療における呼吸器内視鏡の意義は病理学的な確定診断のみならず,NGSを用いた遺伝子パネル検査などのバイオマーカー検索,薬剤性肺障害の鑑別診断,気道狭窄に対する治療目的など多岐にわたる.特に多様化する治療薬の進歩とともに検体検査の重要性はより増している.クライオバイオプシーは間質性肺疾患の診断において欧米では広く普及している手技であり,大型で挫滅の少ない検体が採取できることから肺癌診断でも有効性が示されているが,国内での使用実績は少なく安全性の点で留意すべき事項も多い.本稿では当院での臨床試験による使用経験とエビデンスから,肺癌診療を行う多くの医療従事者へその有用性とポイントについて概説する.

原著
  • Satoshi Igawa, Masanori Yokoba, Tomoya Fukui, Jiichiro Sasaki, Katsuhi ...
    2020 年 60 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    Objective. The post-progression survival (PPS) following first-line chemotherapy has been shown to influence the overall survival (OS) of patients with malignant diseases, including lung cancer. The aim of this study was to compare the influence of the PPS on the OS of elderly or poor performance status (PS) patients with extensive-disease small-cell lung cancer (ED-SCLC) to that of the progression-free survival (PFS) on the OS. Methods. The medical records of patients with ED-SCLC who were elderly (≥70 years old) or had a poor PS and who received chemotherapy between March 2010 and December 2017 were retrospectively reviewed. Seventy-five such patients who were treated with carboplatin-based chemotherapy or amrubicin monotherapy as first-line intervention were included, and the relationships between the OS and the PFS and PPS were analyzed. Results. The median age of the 75 patients was 72 years old. The median PFS and OS intervals were 6.1 and 11.8 months, respectively. Spearman's rank correlation and linear regression analyses showed that the PPS was more strongly correlated with the OS (r = 0.91, R2 = 0.83, P = 0.0001) than with the PFS (r = 0.81, R2 = 0.65, P = 0.017). In the multivariate analysis, a good PS, using carboplatin-based chemotherapy as the first-line chemotherapy, achieving a response to first-line chemotherapy, and implementation of second-line chemotherapy were independent favorable predictors of the PPS. Conclusion. The PPS after first-line chemotherapy has a strong impact on the OS in elderly or poor PS patients with ED-SCLC. Given the findings of this study, the development of novel anti-cancer drugs that are effective against SCLC is warranted to improve the PPS in such patients.

  • 杉原 潤, 竹山 裕亮, 鴨志田 達彦, 大川 宙太, 川口 陽史, 八木 太門, 花田 仁子, 瀧 玲子, 小島 勝雄, 櫻井 うらら
    2020 年 60 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.CTで指摘される小型肺結節において,切除不要な病変を手術するリスクが一定の割合で存在する.そこに至る理由を考察することは適切な治療を提供する上で意義がある.方法.2010年4月から2016年10月までに当院で外科的に切除された肺の結節性病変のうち,CTで最大径2.0 cm以下であった病変を対象とし,画像所見や術前検査と病理診断の関係を後方視的に検討した.結果.237名の患者より得られた270の病変が対象となった.内に凸で多角形の結節は悪性病変と良性病変とを同程度に含み,また臨床診断と病理診断が一致しない17症例中8症例を占め,特に診断困難な群と考えられた.結論.CT径2.0 cm以下の肺結節において,内に凸の多角形の形状を示す病変は特に良悪性の鑑別が困難であり,慎重な評価が必要である.

症例
  • 西木 一哲, 佐久間 貴士, 野尻 正史, 川崎 靖貴, 四宮 祥平, 水野 史朗
    2020 年 60 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    症例.69歳男性.61歳時に房室ブロックに対してペースメーカー植え込み術が行われ,その後左上葉の心臓ペースメーカー背側に陰影が出現し,気管支鏡検査で小細胞肺癌と判明した.臨床病期IIIBの限局型小細胞肺癌であり化学放射線療法の適応と考えられたが,ペースメーカー背側に腫瘍が存在していたためシスプラチン+エトポシドによる化学療法を1コース先行後,リード線は残したまま左前胸部のペースメーカーを抜去し対側へ新たにペーシングシステムを挿入し,化学放射線療法を施行した.合計4コースの化学療法を行い,寛解が得られ,以後再燃なく経過している.ペースメーカー装着肺癌患者への放射線療法において,ペースメーカーに放射線が直接照射された場合,リセットやオーバーセンシングなどの動作異常が生じることが知られており,放射線療法を行うことは困難である.結論.本症例はペースメーカー背側に腫瘍を認めたが,対側に新たにペーシングシステムを挿入することで化学放射線療法を行い,寛解に至ることが可能であった.

  • 河口 洋平, 松浦 陽介, 二宮 浩範, 奥村 栄, 石川 雄一, 文 敏景
    2020 年 60 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.原発性肺扁平上皮癌は一般に肺門中枢側に発生することが多いとされるが,末梢側発生の扁平上皮癌も増加傾向にある.今回,末梢小型肺結節を契機に発見された中枢型扁平上皮癌の1切除例を経験したため報告する.症例.77歳,男性.下咽頭癌の術後,当院頭頸科で経過観察がなされていた.術後3年目の胸部CTで,右S3末梢に単発の小型肺結節を指摘され,当科紹介となった.画像所見,臨床経過から原発性肺癌や転移性肺腫瘍を疑い,右肺上葉切除術を施行した.病理診断では,末梢小型肺結節は肺原発の扁平上皮癌と診断された.しかし,右B3根部にも気管支内腔を閉塞するように扁平上皮癌を認め,それが中枢・末梢へ上皮内進展を来していた.最初に指摘された末梢の扁平上皮癌は,右B3根部より発生した扁平上皮癌が末梢進展した結果形成された結節と考えられた.また,中枢進展の結果,気管支断端は病理学的に陽性と診断された.初診時の胸部CTを再検討すると,右B3aは根部で途絶し,B3b気管支壁の肥厚を認めた.結語.孤発性病変と考えられたが中枢気管支に病変を認めた症例を経験した.中枢病変の可能性を念頭に置いた術前検索が重要である.

  • 木村 正樹, 神山 幸一, 臺 勇一
    2020 年 60 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.髄膜腫は原発性頭蓋内腫瘍の中では頻度が高い腫瘍である.一般的には良性腫瘍と考えられているが,頭蓋外臓器に遠隔転移を起こすことが稀にある.症例.54歳男性.健診で胸部異常陰影を指摘され精査目的で外来を受診した.8年前に異型性髄膜腫に対し他院で開頭手術と補助放射線治療が行われた.その後,頭部皮下組織に再発を繰り返し3度の摘出手術が行われている.胸部CTで左肺S9に大きさ15 mmの境界明瞭な結節と,右肺S1に大きさ5 mmの小結節を指摘された.左肺の結節を胸腔鏡下に切除し,病理組織検査および免疫染色化学検査で異型性髄膜腫の肺転移と診断された.結論.頭蓋内腫瘍の既往歴を有する患者の胸部異常陰影では,髄膜腫の肺転移を鑑別診断に加える必要がある.

  • 内匠 陽平, 辛島 高志, 安部 美幸, 宮脇 美千代, 駄阿 勉, 杉尾 賢二
    2020 年 60 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺原発ホジキンリンパ腫は稀な腫瘍であり,術前診断に至ることは困難である.症例.39歳女性.虫垂炎の術前検査で異常を指摘され,CTで心膜に接する5 cm大の腫瘤性病変を指摘された.気管支鏡下生検が施行され,組織型不明の悪性腫瘍の診断で当科紹介となった.原発性肺癌疑いで診断と治療目的に左上葉切除が施行された.病理標本では,散在する単核のHodgkin細胞および多核のReed-Sternberg細胞を認め,免疫染色でこれらの巨細胞はCD15(+),CD30(+)であった.Classic Hodgkin lymphoma,nodular sclerosis typeと診断された.肺以外に病変を認めず,肺原発ホジキンリンパ腫と診断した.結語.肺原発ホジキンリンパ腫の術前診断は困難であり,適切な治療のためにも,確実かつ正確な組織診が極めて重要である.

  • 谷 望未, 吉村 彰紘, 張田 幸, 福井 基隆, 山田 忠明, 髙山 浩一
    2020 年 60 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.アミラーゼ(amylase:AMY)産生肺癌は治療抵抗性を示し,また,血清・尿中アミラーゼ値が病勢を反映し,治療効果の指標となることが報告されている.症例.60代男性.血痰と胸部異常陰影を主訴にX年8月に近医を受診した.精査の結果,骨転移を伴う右上葉原発肺腺癌と診断した.血清および尿中アミラーゼ値の上昇,病理検体でanti-human α-amylase染色陽性を確認したため,アミラーゼ産生肺腺癌と診断した.診断後,シスプラチン,ペメトレキセド併用化学療法を開始し,腫瘍縮小を認めた.また,治療経過に一致して血清および尿中アミラーゼ値は減少した.結論.血清・尿中アミラーゼ値が全身化学療法の治療効果のバイオマーカーとして有用であったアミラーゼ産生肺腺癌を経験したため報告する.

  • 近藤 祐介, 平岩 真一郎, 田﨑 厳, 中川 知己, 山田 俊介, 坂巻 文雄
    2020 年 60 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.原因不明の滲出性胸水の診断に胸腔鏡による観察および生検が有用である.滲出性胸水貯留の原因として悪性リンパ腫も挙げられる.症例.71歳男性.健康診断で胸部X線検査上,左側胸水貯留を指摘されて受診した.複数回の胸水検査では,リンパ球優位の滲出性胸水であり,胸水中ADA活性,細胞診を含む諸検査では原因を特定することができなかった.患者の希望で経過観察とされた.初診から約1年後に胸水の増加を認めたため,再度精査を行い,胸部CT,FDG-PET検査で胸骨後部および心嚢周囲の胸膜に腫瘍性病変の増大を認めた.胸腔鏡検査を行ったところ,薄茶色をした表面が平滑な比較的柔らかい腫瘍性病変を認めた.同部位から採取された検体でMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫と診断された.結論.胸水貯留を契機とし,胸骨後部および心嚢周囲の壁側胸膜に認めたMALTリンパ腫の1例を報告した.診断には胸腔鏡による生検が有用であった.

  • 冨田 栄美子, 福原 謙二郎, 高瀬 直人, 塚本 吉胤, 明石 章則
    2020 年 60 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.近年の3D-CTや気管支鏡検査の精度向上によって気管支分岐異常を指摘される機会は増えているが,左上葉気管支分岐異常の報告は依然として稀である.今回,我々は左上葉気管支分岐異常を伴った肺癌に対して胸腔鏡下に手術を行ったので報告する.症例.76歳の男性.前医で急性心筋梗塞の治療時に施行した胸部CTで左肺尖部に19 mm大の結節影を指摘された.左上葉肺癌(cT1bN0M0 Stage IA2)を疑い,気管支鏡検査を施行したが診断に至らず,当院を受診した.術前に3D-CTを作成したところ,前医では指摘されていなかった左B1+2の転位性分岐異常と左B6欠損を認めた.術中診断で原発性肺癌と診断したが,併存症を鑑みて縮小手術を選択し左S1+2a+b亜区域切除を行った.術後3.5年が経過したが再発を認めていない.結論.左上葉気管支分岐異常領域に発生する肺癌は稀で,術式について一定の見解はないが,亜区域切除も術式の一つとして許容される可能性があると考えられた.また,リンパ節郭清に関しては,解剖学的にも近接する上縦隔リンパ節郭清は行う方が望ましいと考えられた.

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