肺癌
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総説
病理診断におけるデジタル化とAIの現状
上紙 航坂元 太朗黒田 揮志夫福岡 順也
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 60 巻 2 号 p. 81-89

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抄録

近年,ホールスライドイメージ(WSI)と呼ばれる技術が確立し,モニター上で病理診断を行うことが可能になった.これにより,デジタルパソロジーの応用は今までの病理医の不足した施設のための遠隔診断にとどまらず,日常診断やコンサルテーションなどへと活用が広がっている.こうして病理組織標本のデジタル画像データが蓄積されることで,急速に人工知能(AI)による画像解析の基盤が整いつつある.現時点では未だ研究レベルではあるものの,腫瘍のリンパ節転移を認識するものや腫瘍細胞割合を計測するもの,あるいは腫瘍の遺伝子変異を予測するものなど,様々なAIが開発されている.今後も加速度的な発展が望まれる一方で,病理標本のデジタル化は期待されたようには拡散せず,多くの施設において診療にAIを活用できる環境は揃っていないのが現状である.また,AI開発の面からも,必要な教師データを作成することの困難さや,AIの判断根拠が不明瞭な状態で臨床応用することへのリスクなど,複数の問題が顕在化している.今後こういった課題解決が必要ではあるが,近い将来にAIがもたらす情報は病理診断にとって必要不可欠なものになるとの予想は変わらず,次世代の病理医にはAIをうまく活用するスキルが求められると予想される.

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© 2020 日本肺癌学会
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