2020 年 60 巻 7 号 p. 936-941
進行肺がんがエビデンスの先駆けとなった「早期からの緩和ケア」は,苦痛症状への対処や精神的ケアにとどまらず,多岐にわたるアプローチで患者のQOLを保ち,延命効果にもつながることが示されている.適切な病状認識と治療目標の確認により,無益な抗がん治療の継続が避けられ,終末期に向けた準備が余裕をもって行われる(アドバンス・ケア・プランニングもその一環として重要である).がん治療医は,エビデンスに乏しい抗がん治療に執着せず,患者の臨床経過を先読みするスキルが求められ,いくつかの予後予測指標も有用である.患者に侵襲を与えないコミュニケーションスキルも必要とされるが,それを補う意味でも緩和ケア専門家との連携は有用である.がん治療医には,患者の価値観を尊重し,患者・家族にとって真に有益な治療を提供する姿勢が求められる.