肺癌
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症例
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬による角膜上皮障害と単純疱疹を繰り返した肺腺癌の1症例
岩本 信一井岸 正門脇 徹坪内 佑介西川 恵美子多田 光宏木村 雅広小林 賀奈子池田 敏和
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2021 年 61 巻 2 号 p. 125-129

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抄録

背景.上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の有害事象として,薬剤性肺障害や皮疹,下痢はよく知られているが,角膜上皮障害や単純疱疹に遭遇することは稀である.症例.69歳女性が胸部異常陰影を指摘され受診した.胸部CTでは右S8に結節を認め,経気管支肺生検で腺癌(EGFR L858R変異陽性)と診断された.脳転移がありcT1bN0M1b stage IVと診断し,エルロチニブを開始した.投与5日目に左下顎部に単純疱疹を発症し,バラシクロビルで治療した.投与11日目に視力が低下し,両角膜上皮炎,両角膜実質炎と診断された.詳細に既往歴を再確認したところ,原因不明の角膜上皮剥離の既往があり,角膜の脆弱性を疑った.エルロチニブを中止したところ,徐々に角膜上皮混濁は改善した.次にゲフィチニブを開始したところ,同日午後から再び視力が低下し,口唇に単純疱疹を発症した.翌日に眼科で角膜上皮混濁の再燃を指摘された.ゲフィチニブを中止した後,角膜上皮混濁は徐々に改善した.結論.角膜上皮障害と単純疱疹は,再投与により再燃したため,EGFR-TKIの有害事象であると考えた.

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© 2021 日本肺癌学会
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