1984 年 24 巻 6 号 p. 743-748
症例は, 70才男性, 咳漱, 呼吸困難多量の漿液性喀疾を主訴とし当科入院.胸部X線上両側肺野に浸潤陰影を伴う多発性空洞陰影を認めた.剖検にて, 乳頭型腺癌, 細気管支肺胞型と判明した.剖検肺には両側に粘液様物質を貯留する円型薄壁空洞が多発していた.空洞はチェックバルブ作用によるtension cavitiesと考えられた.又他の部位には壁の厚い空洞も認められ, 空洞形成の機序には腫瘍細胞の粘液過剰産生, 易剥脱性, 間質の脆弱性等が関与していると推定された.