肺癌
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顆粒球コロニー刺激因子産生肺癌の一例
阿部 良行中村 雅登加藤 優子小川 純一井上 宏司多田 伸彦
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1992 年 32 巻 2 号 p. 279-284

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抄録

症例は56才男性.胸部異常陰影を指摘され, 肺癌の術前診断で, 左下葉切除・リンパ節郭清術施行 (病理診断: 大細胞癌, T2N1M0).術後6ヵ月, 急性腹症で緊急入院し, 諸検査で肺癌の副腎転移が疑われた.はっきりした感染がないにもかかわらず, 白血球数は21,800/μlと異常高値を示した.疹痛軽減を目的に腹部腫瘤摘出術施行し, 病理学的に肺癌の転移と診断された.術直後, 白血球数は低下傾向を示したが, 再上昇し, 術後23日目に腫瘍死した.死亡直前の白血球数は46,500/μlであった.血清中の顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) は146pg/ml (正常<60) と高値を示し原発巣および転移巣の腫瘍組織より抽出したRNAをノザンプロット法で解析し, 両者にG-CSFのmRNAの発現を認めた.本症例では, 腫瘍細胞での自律的なG-CSF遺伝子の発現と血清中へのG-CSFの過剰分泌が分子生物学的に証明され, 白血球増多症に対する腫瘍産生性G-CSFの関与が明らかにされた.

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© 特定非営利活動法人 日本肺癌学会
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