症例は61歳の女性, 3年前に左下葉の径約70mmの円形嚢胞を指摘されていた. 他疾患で近医を受診した際, 嚢胞は充実性に変化しており, 経皮的針細胞診等から腺癌の診断を得た. その後息切れと, 血痰の増強に伴い当院へ紹介となった. 手術時の所見は約400mlの悪性胸水と胸膜播種があり, 癌細胞の進展した嚢腫は舌区, 横隔膜に浸潤していたため, その合併切除を含む左下葉切除 (Ro) を行い, 術後に化学療法を施行した. 切除標本は単房性球形嚢胞の壁を這うように進展した癌組織を認めた. 病理組織学的に, 嚢胞は内腔が繊毛円柱上皮に裏打ちされた気管支嚢胞であり, 一部が癌細胞に置換されていた. 癌の組織型は, 嚢胞周囲に強く増殖した高分化腺癌であった. 嚢胞性肺疾患に肺癌の合併率が高いことは良く知られているが, 気管支嚢胞との合併報告は少なく稀な病態である. 無症状でも発癌の可能性がある気管支嚢胞は, 肺癌合併の疑いがあれば積極的切除対象になると思われる.