1992 年 32 巻 3 号 p. 389-395
症例は重喫煙歴のある71歳, 男性.Mycobacterium avium complexによる肺非定型抗酸菌症の診断で4年間, 薬物治療を受けていたが, 胸部X線写真にて右S4に腫瘤影が出現.気管支鏡下生検の結果から肺小細胞癌と診断.CAV2コースを施行後CRの治療効果を得たが, M.avium complexの再排菌をきたした.肺非定型抗酸菌症の増悪を考慮し, 肺癌化学療法CR後のadjuvant surgeryも兼ねて右上・中葉切除術を施行した.摘出標本の検索ではS1の空洞壁は乾酪壊死巣を伴う肉芽組織により形成され, 空洞内容物からはM.avium complexを分離, 同定したが, S4には腫瘍細胞の遺残を認めなかった.術後3年経過した現在, 肺非定型抗酸菌症および肺小細胞癌の再発兆候なく生存中である.