肺癌
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粘液産生肺腺癌の臨床病理学的検討
杯細胞型腺癌切除例について
児玉 哲郎松本 武夫高橋 健郎西山 祥行西村 光世山下 真一石塚 真示林辺 晃西脇 裕阿部 薫
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1992 年 32 巻 4 号 p. 507-516

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抄録

過去19年間の杯細胞型肺腺癌切除例29例について, 臨床病理学的に検討した.男性12例, 女性17例で, 発生年令は42才から78才, 平均63.8才であった.自覚症状発見は10例で, 喫煙歴は不明1例を除いて, 喫煙者14例, 非喫煙者14例であった.胸部X線写真及び肉眼所見により, 結節型19例と, びまん型10例とに分類された.原発部位では下葉原発が19例 (66%) と多く, ことに右下葉原発は15例 (52%) であった.手術は全摘1例, 二葉切除5例, 一葉切除22例, 区域切除1例であった.術後病理病期は, I期14例, IV期15例で, IV期はすべて肺内転移例で, びまん型では10例中9例がIV期であった.多発癌2例を除いた杯細胞型腺癌切除例27例の予後をみると, びまん型9例と結節型18例の5年生存率は各々85.2%と26.7%で, 有意差があった (p<0.01).細胞亜型別にはpuretype17例とmixed type10例の5年生存率は各々65.9%と30.0%であったが, 有意差はなかった.杯細胞型腺癌27例と性, 年齢, 病期を一致させたクララ細胞型或いは, 気管支表面上皮型腺癌切除例81例の5年生存率は各々57.2%と40.5%で, 杯細胞型腺癌の方が予後がやや良好であったが, 有意差はなかった.杯細胞型腺癌は特異な進展形式と細胞性格を示す腺癌の一亜型である.

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