抄録
肺がん検診の有効性評価に関しては, 1970-1980年代初頭の検診・診断・治療水準を評価した無作為化比較試験では有効性を証明できなかったが, 1990年代の水準を評価した4つの症例対照研究では検診受診により30-60%救命可能なことが判明した. しかし, 全国的に見れば, 精検受診率が低い自治体もある. 県の成人病検診管理指導協議会が中心となって, 精度管理の水準を地区ごとに評価し公表することが必要である. 胸部CT検診では, 肺癌発見率と生存率は驚異的に高いが, シミュレーションによれば発見数は急速に低下するはずであり, 多数の発見が続くならば, それは「死に至らない肺癌」すなわちOverdiagnosis biasによる可能性が示唆された. 剖検例のCT所見の検討によると, 死亡前に診断されず剖検で診断された肺癌が相当な比率に上り, 剖検でチェックされずCTでは指摘できた肺腫瘤はさらに多数であり, Overdiagnosis biasは胸部CT検診の結果に重大な影響を与えている可能性がある. 真に有効性を証明するためには無作為化比較試験を行うのが望ましい.