日本ハンセン病学会雑誌
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原著
国立ハンセン病療養所A園における入所者の看取り看護の実践と課題の構造
伊波 弘幸
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2016 年 85 巻 3 号 p. 123-132

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抄録

 本研究の目的は、国立ハンセン病療養所A園 (本稿ではA園とする) における看取り看護の実践と課題を明らかにすることである。一般病院及びA 園センター (以後センターとする) 脚注1) で看取り看護の経験がある看護師4名に半構造化面接を行った。分析は、質的統合法 (KJ法) を用い、個別分析と総合分析を行った。総合分析の結果から、看護師は、家族関係が希薄な入所者と関わる中で、入所者の【家族を意識した看取り看護の必要性】を強く感じるようになっていた事が分かった。その思いを基盤に日々の看護の中で入所者のライフサポートを意識しながら【生活者の視点を重視した看取り看護】を行っており、その実践の中で【入所者の楽しみに働きかける看取り看護】が看護師の看取り看護に対する満足感や遣り甲斐に繋がっていた。しかし、センターでの看取り看護の経験が少ない看護師は、不安やジレンマを抱きながら入所者の看取り看護の実践を行っていたことが明らかになった。その中で、【看護師の看取りに関する意識の相違】と【施設として入所者を看取ることの方針の不明確さ】の課題が描出され、今後のA園における看取り看護の方向性が示唆された。

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© 2016 日本ハンセン病学会
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