日本ハンセン病学会雑誌
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原著
国立ハンセン病療養所における入退所動向に関する研究
−1909年から2010年の入退所者数調査から−
森 修一石井 則久
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2017 年 86 巻 1 号 p. 69-90

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抄録

 日本のハンセン病政策は1907年の 「癩 (らい) 予防ニ関スル件」 の施行に始まるが、患者隔離は1909年の連合府県立 (国立) ハンセン病療養所 (以下、療養所) の開設からであった。本政策は1996年の 「らい予防法」 廃止まで継続され、約35,000人 (実数、推測値) が隔離を受けたが、その入退所動向の全容は未だ明らかではない。本研究では国立療養所の入退所動向を解析し、日本のハンセン病政策の実態を明らかとすることを目的とし、1909年から2010年まで102年間の入退所者数とその内訳を各国立療養所の年報や内部資料を収集し、内容を検討し、項目などを統一した上で、年次ごと、ハンセン病に関するそれぞれの法律の施行されている期間ごとにその内訳を集計した。その結果、102年間の総入所者数 (入所、再入所、転入を延べ数として集計した) 56,575人、総退所者数 (転所、軽快退所、自己退所、ハンセン病でない、その他を延べ数として集計し、死亡者数を加えた数) 54,047人 (死亡 : 25,200人、転所 : 4,350人、軽快退所 : 7,124人、自己退所 : 12,378人、ハンセン病でない : 310人、その他 : 4,685人) であった。法律ごとの内訳は、 「癩予防ニ関スル件」 (1907年―1931年) では総入所者数12,673人、総退所者数9,070人 (死亡 : 3,496人、転所 : 197人、軽快退所 : 79人、自己退所 : 4,824人、ハンセン病でない : 55人、その他 : 419人) 、 「癩予防法」 (1931年―1953年) では総入所者数31,232人、総退所者数23,354人 (死亡 : 11,559人、転所 : 488人、軽快退所 : 2,087人、自己退所 : 5,848人、ハンセン病でない : 247人、その他 : 3,125人)、 「らい予防法」 (1953年―1996年) では総入所者数12,098人、総退所者数18,159人 (死亡 : 7,654人、転所 : 3,450人、軽快退所 : 4,412人、自己退所 : 1,558人、ハンセン病でない : 8人、その他 : 1,077人)、 「らい予防法廃止に関する法律」 (1996年―2009年) では総入所者数572人、総退所者数3,464人 (死亡 : 2,491人、転所 : 215人、軽快退所 : 546人、自己退所 : 148人、ハンセン病でない : 0人、その他 : 64人) であった。今回の研究から日本の隔離政策下での入退所動向の全容がはじめて明らかとなった。

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