日本ハンセン病学会雑誌
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原著
九州療養所/国立療養所菊池恵楓園入所者の剖検に関する調査報告
野上 玲子
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2021 年 90 巻 3 号 p. 67-76

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抄録

 当施設入所者に対して行われた剖検について園内所蔵の各種関連資料を用いた悉皆(しっかい)調査を行った。資料の保存状態や記載内容は完璧なものではなく、複数の資料からの情報を補完して1911(明治44)年から1965(昭和40)年までに実施された388件(男273、女115)を特定し、剖検実施の法的手続き等について検証した。当施設初の一次資料に基づく大規模な調査となり、着手以来、資料保存整理作業が加速された。

 われわれはかねてより歴史的医学資料の保存、利活用の意義を主張し、ハンセン病療養所に残る各種資料のアーカイブズ構築の重要性について論じてきた。この調査は、アーカイブされた資料が重要かつ有用であることを示す先がけとなった。今後も、ハンセン病にまつわるさまざまな課題を検証する上で、原資料を拠り所として歴史的背景、社会的慣習、生命倫理、患者の人権に対する考え方の変化と対比することにより考察を深めることが強く求められる。

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