2024 年 93 巻 3 号 p. 115-125
本研究の目的はハンセン病療養所の入所者の人生の最終段階のケアに示唆を得るためにエリクソンが提唱する心理社会的発達課題の「統合性」(以下、「統合性」)の達成度の実態と関連要因を明らかにすることである。国内13園の入所者数1,094中2園の35名が研究参加者となった。結果、入所者の「統合性」はかなり高いレベルの達成度であった。「統合性」の高さは入園期間の短さ、社会復帰経験あり、就業経験あり、園外家族との付き合いあり、精神的自立性の高さと関連した。入所者の場合、療養所や社会それぞれの環境で、孤独や障害、脅威などの様々な危機を克服しつつ仲間と協働し適応した過程において自我の強さが培われ、「統合性」の達成を支えるものになったと考える。その為、入所者個々の体験や強さを捉え、入所者の日々の目標や生き方、入所者の自律を支えることにより入所者が生きる実感を得られ、入所者の「統合性」を高める支援となることが示唆された。