1999 年 68 巻 2 号 p. 97-108
NF-IL6ノックアウトマウスの腹腔内あるいは両後肢足底内にらい菌感染を実施し、田中等4)により見出された殺菌・排除機構がらい菌ではどのように働くかについて検討した。NF-IL6ノックアウトマウスの腹腔内に接種されたらい菌は腹腔網内系組織や雄性生殖器内で増菌が認められた。後肢足底内接種でもらい菌感染後期に緩慢な増殖像が認められた。感染後1ヵ月目の腹腔マクロファージの培養上清中にはIL-1α、TNFα、NO2-産生、また、対照ワイルドマウスよりも強いIL-12の産生を認めた。加えて、培養脾細胞上清中からは感染経過に伴い対照ワイルドマウスよりも強いIL-2産生を認め、NF-IL6ノックアウトマウスのらい菌感受性能は、ヌードマウスと免疫正常マウスとの中間型を示した。このようなNF-IL6ノックアウトマウスに特異的ならい菌増殖像とサイトカイン産生能との解離した結果は、NF-IL6遺伝子を介したマクロファージによる殺菌・排除機構に起因するものと推察されたが、リステリアやサルモネラ感染とは異なり、らい菌感染の場合、菌増殖による死亡例も認められず長期の観察が可能であったことから、らい菌の宿主からの殺菌・排除には、マクロファージが重要な役割を演ずるが、加えて、Thlサイトカインを産生するT細胞を介した免疫機構もマクロファージと相互制御的に協同作用する事により同様に重要な役割を担っているものと考えられた。