抄録
神経因性疼痛は、世界疼痛学会の定義によると神経の障害、機能不全、一時的な神経の混乱により発症する疼痛である。その代表的な原因としては、糖尿病、帯状疱疹、がんの化学療法など様々なものがある。その症状は、自発痛としては灼熱痛、電撃痛、さされるような痛み、締め付けられるような痛み、シビレ痛みなどがあり、知覚異常としてはアロディニア (触刺激のような弱い刺激を強い痛みと感じる現象)、痛覚過敏 (痛み刺激を、その刺激強度で通常感じる以上の痛みと感じる現象) などがある。現在、神経因性疼痛は治療法が確立されておらず、治療に難渋することが多い。ハンセン病の後遺症として痛みを訴える患者は多い。この痛みは、らい菌による神経の損傷に発症する神経因性疼痛であると考えられる。従って、ハンセン病患者の慢性神経痛を治療するには、神経因性疼痛の治療の知識を持って行う必要がある。本稿では、神経因性疼痛の発症メカニズムと最近の神経因性疼痛治療の考え方を紹介する。