抄録
これまでかなりの期間にわたり, 筆者らは前頭葉機能とその障害に関する臨床的検討を行ってきたが, これまで考えてきたこと, 得られた若干の知見を振り返り, 今後の課題など述べた。まず, 5つの障害の形式 [概念ないし “セット” の転換の障害 (高次の保続), ステレオタイプの抑制の障害, 複数の情報の組織化の障害, 流暢性の障害, 言語 (意味) による行為の制御の障害] とそれぞれの神経心理学的検査法に関する研究を述べ, 神経心理学と精神病理学をつなぐ試みとして, 前頭前野 (外側穹窿部) 梗塞例の症状に関する報告を紹介した。さらに, 現在と今後の課題として, 前頭葉機能障害の包括的バッテリー (BADS) と前頭葉眼窩部損傷の評価法, また統合失調症と前頭葉機能障害に関する見解を述べた。