嚥下は口腔期,咽頭期,食道期よりなるが,とくに気道と食塊通路の共通路で惹起される咽頭期嚥下は,咽頭および喉頭を取りまく多数の筋群による高い再現性をもったもっとも精緻な運動の一つである。このようなステレオタイプの運動様式を示す咽頭期嚥下は,延髄に存在する嚥下のパターン形成器 (CPG) によってプログラムされた運動であると考えられている。随意的に開始される口腔期の嚥下からパターン出力である咽頭期嚥下への移行は,上位の中枢神経系の働きにより円滑に行われている。また,大脳基底核は嚥下の随意期の運動の制御のみならずサブスタンスP を介して嚥下の惹起性をコントロールしている可能性も示唆されている。