抄録
記憶は,まず短期記憶と長期記憶に分類され,長期記憶は,顕在記憶と潜在記憶に分けられる。さらに,顕在記憶はエピソード記憶と意味記憶に分類される。臨床上しばしば観察されるのは,この意味記憶とエピソード記憶の障害である。健忘症候群は,典型的には顕在記憶中のエピソード記憶の選択的障害である。健忘症候群は,損傷の部位と神経心理学的プロフィールとに基づき,間脳性健忘,側頭葉性健忘,前脳基底部健忘に分類される。意味記憶の障害とは,語や物に関する知識や情報が想起できない状態を指している。脳損傷後に出現する意味記憶障害には,しばしばカテゴリー特異性が随伴する。