高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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28 巻 , 2 号
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特別講演
  • Robyn L. Tate
    2008 年 28 巻 2 号 p. 129-142
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       This paper describes rehabilitation for traumatic brain injury, drawing upon the infrastructure provided by a state-wide, coordinated network of clinical services in New South Wales, Australia. The first part of the paper provides a contextual background of traumatic brain injury covering the incidence, neuropathology, characteristic patterns of impairment and the recovery process. The second part describes the clinical services, with a particular emphasis placed on the community rehabilitation approach used at the Liverpool Hospital service. Specific therapy programs for neuropsychological and social impairments are described, along with the PsycBITETM resource (the Psychological database of Brain Impairment Treatment Efficacy), available at http://www. psycbite. com. PsycBITETM is an interactive database of all the published reports of nonpharmacological treatments for the psychological consequences of acquired brain impairment. The availability of PsycBITETM facilitates the identification of evidence-based interventions.
特別講演(日本語訳)
  • Robyn L. Tate, 大沢 愛子(訳)
    2008 年 28 巻 2 号 p. 143-151
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       本稿では,オーストラリアNew South Wales (NSW) 州において実施されている州単位の臨床ネットワークサービスに基づき,外傷性脳損傷患者に対するリハビリテーションについての解説を行った。はじめに,外傷性脳損傷の発生率,神経病理,特徴的な障害パターンと回復プロセスを含む外傷性脳損傷の背景について述べた。次に,臨床的なサービス,特にLiverpool Hospital Service を例に,地域社会におけるリハビリテーションアプローチについて言及した。また,神経心理学的および社会的な機能障害に対する専門的な治療について解説を行うとともに,PsycBITETM (脳損傷治療の有効性に関する心理学的データベース) (http://www.psycbite.com) についても記載した。PsycBITETM は後天的な外傷性脳損傷の心理学的・神経心理学的治療に関し,これまでに発表された (薬理学的治療を除く) すべての論文の相互データベースである。PsycBITETM を利用することは,科学的根拠に基づく医療的介入の共有化を促進する一助になるものと考える。
シンポジウム:高次脳機能の局在とネットワーク
  • 植村 研一, 田川 皓一
    2008 年 28 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
  • 板倉 徹, 西林 宏起, 中尾 直之
    2008 年 28 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       言語関連野と頭頂葉連合野に病変を患者19 例に対して,術中覚醒下に大脳皮質を刺激してその反応を観察した。男性15 例女性4 例で年齢は18 歳から72 歳。腫瘍はグリオーマが14 例,転移性脳腫瘍が4 例,その他1 例であった。覚醒手術はプロポフォール麻酔下に皮膚切開と開頭を行い,その後覚醒下に皮質刺激を行った。言語関連野の術中刺激による反応は症例によるばらつきが著しかった。ただBroca 野やWernicke 野の刺激では言語停止が多くみられ,それぞれの近傍では言語の保続が観察されることが多かった。頭頂葉の術中刺激では右側では半側空間無視などは観察されなかった。左頭頂葉の刺激では肢節運動失行,手指失認,構成障害,口腔顔面失行や観念運動失行が皮質刺激で一過性に観察された。
  • 大槻 美佳
    2008 年 28 巻 2 号 p. 163-175
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       前頭葉および基底核の高次脳機能を検討した。前頭葉の機能は以下の3 つの事項に関して,それぞれ臨床症状と病巣の関係,およびfMRI を検討した。1)ワーキングメモリと聴覚言語性短期記憶,2)書字障害,3)種類の限られた単語の障害。その結果,前頭葉の中で,特に中前頭回はワーキングメモリの中央遂行系に関与することが示唆された。このことは,書字やキーボード打ちなどの,音韻をtemporal に配列する機能にも関係していると推測された。基底核に関しては,1)手続き記憶のfMRI,2)鏡像書字の検討を行った。その結果,基底核は手続き記憶に関与していること,特に言語が関与する場合には左の尾状核が関与していること,基底核には書字運動機能を含めた左右可変の情報を安定化させる機能があることが示唆された。
  • 鈴木 匡子
    2008 年 28 巻 2 号 p. 176-183
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       皮質電気刺激は限局した部位の高次脳機能を一時的に止めるため,言語野を詳細に調べることができる。難治性てんかん患者において,この手法で言語野を検討したところ,1 つの言語野内でも1 センチ離れると異なる言語機能があること,言語野には個人差が大きいこと,前方言語野・後方言語野ともに言語の表出・受容の両面に関わっていることが明らかになった。さらに,皮質電気刺激で提唱されている側頭葉底面言語野について検討した。側頭葉底面を刺激したところ,言語障害が誘発された場合にのみ,刺激中に上側頭回後方の言語野に脳波変化が認められた。したがって側頭葉底面-後方言語野の機能的関連により言語症状が出現したと考えられた。皮質脳波を用いた事象関連電位では,呼称や単語の弁別に関連して左側頭葉底面でガンマ帯域の脳波変化が認められた。以上,皮質電極を用いた検討は,個人ごとの言語機能の局在・連合を解明する上で有用であると考えられる。
  • 横山 絵里子, 中野 明子
    2008 年 28 巻 2 号 p. 184-191
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       頭頂葉病変に関連する,伝導失語,半側空間無視,着衣障害の脳画像研究について概説した。脳循環代謝の解析からは,伝導失語でBroca 野とWernicke 野が保たれ弓状束が限局性に障害されるという解剖学的離断所見は得られず,左シルビウス溝周辺の前頭葉,側頭葉,頭頂葉の広い病巣で伝導失語を認めた。右病変による左半側空間無視では,BIT の成績は右上頭頂小葉,右楔前部や右上後頭回の脳血流低下を反映すると考えられた。左病変による右半側空間無視では広範な左大脳半球皮質域や右頭頂葉の脳血流低下を認め,左半球のみならず右頭頂葉も右半側空間無視の発現に関与する可能性が示された。左病変による着衣障害では,右前頭葉内側(右帯状回前部)の脳血流低下との関連が推察された。着衣障害の改善には,左病変では両側前頭葉,右側頭頭頂葉,両側後頭葉が,右病変では左前頭葉外側,両側前頭葉内側,両側頭頂葉,左後頭葉など,両側大脳半球が関わる可能性があった。
  • 大沢 愛子, 前島 伸一郎
    2008 年 28 巻 2 号 p. 192-205
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       小脳は,長い間,純粋に運動の調節や制御を行うための神経基盤であると考えられてきた。しかし,1980 年代の半ばごろから,小脳と高次脳機能の関連性を示唆するような解剖学的,神経心理学的な種々の報告がなされるようになってきた。特に,近年の電気生理学や神経画像の発展に伴い,注意や記憶,視空間認知,計画,言語などに関するさまざまな課題の遂行に,小脳が関与していることが明らかになってきた。臨床的にも,脳卒中や自閉症,注意欠陥・多動性障害例などで小脳病変と認知機能障害に関する報告がみられる。
       小脳と高次脳機能の関連についての仮説としては,小脳が内部モデルによる行為のモニターとフィードバックを行うとする説,情報処理の円滑な協調化を行うとする説,タイミングの制御を行うとする説などがある。しかし,これまでの研究には,運動出力との分離が困難である,前頭葉の賦活を伴うなどの種々の問題点もあり,小脳がどのように認知機能に関連しているのか,という問いに答えるためのエビデンスの構築が望まれる。
教育講演
  • 加藤 元一郎
    2008 年 28 巻 2 号 p. 206-213
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       記憶は,まず短期記憶と長期記憶に分類され,長期記憶は,顕在記憶と潜在記憶に分けられる。さらに,顕在記憶はエピソード記憶と意味記憶に分類される。臨床上しばしば観察されるのは,この意味記憶とエピソード記憶の障害である。健忘症候群は,典型的には顕在記憶中のエピソード記憶の選択的障害である。健忘症候群は,損傷の部位と神経心理学的プロフィールとに基づき,間脳性健忘,側頭葉性健忘,前脳基底部健忘に分類される。意味記憶の障害とは,語や物に関する知識や情報が想起できない状態を指している。脳損傷後に出現する意味記憶障害には,しばしばカテゴリー特異性が随伴する。
  • 前田 真治
    2008 年 28 巻 2 号 p. 214-223
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       半側空間無視は,右半球損傷に伴いやすく,損傷大脳半球と反対側の刺激を無視する症状である。臨床症状の特徴は,顔や視線が健側を向いている,患側にいる人に気づかない,患側の食事の食べ残しで気づくことが多い。また読字・書字障害や談話障害などもみられる。半側空間無視の検査にはBehavioural Inattention Test やCatherine Bergego Scale などがある。発現機序には,注意障害説,方向性運動低下説,表象障害説などがある。また左視野の刺激もプライミング刺激が認められ,ある程度まで脳内で処理されている。責任病巣は,中大脳動脈,後大脳動脈,前大脳動脈領域,視床などがある。リハビリテーションは,左側へ注意をうながす訓練や代償を用いた訓練などが報告されている。その要点は,左側にとらわれずに感情的交流を工夫すること,刺激方法に工夫を入れること,意欲を高めることなどである。これらの注意点を理解した上で,リハビリテーションチームで適切に対応すべきである。
  • 加我 君孝, 竹腰 英樹, 林 玲匡
    2008 年 28 巻 2 号 p. 224-230
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       両側の聴皮質あるいは聴放線損傷によって生じる聴覚障害は聴覚失認あるいは皮質聾と呼ばれる。この聴覚障害を初めて報告したのは,19 世紀のWernicke である。脳画像の進歩により,神経心理学的検査,電気生理学的検査と合せて正しく診断ができるようになった。さらに,MRA-A により脳血管障害の場合,中大脳動脈の灌流領域のどこが閉塞しているかも明らかにすることができる。認知障害は,純音,語音,楽音,環境音のすべてに対して生じる。純音聴力検査では軽~中等度の閾値を示すのに対して,語音,楽音の認知は極端に悪い。環境音の認知も低下するが,太鼓や足音のようなリズミカルな音はわかりやすい。
      以上の聴覚失認は,二度の時期の異なる時に生じた脳血管障害やヘルペス脳炎,水頭症などで生じる。補聴器はまったく役に立たない。失語を合併していなければ,読話が少し効果のあることがある。
短報
  • 駒澤 敦子, 鈴木 伸一, 久保 義郎, 丸石 正治
    2008 年 28 巻 2 号 p. 231-235
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2009/07/01
    ジャーナル フリー
       本研究の目的は,高次脳機能障害者における受傷後の生活状況と社会的行動障害との関連について検討することであった。外傷性脳損傷者404 名を対象に,その家族に回答を求めた。現在の生活状況(一般就労,就学・福祉的就労,在宅)と「社会適応障害調査票」によって得られた得点との関連を共分散分析によって検討した結果,就学・福祉的就労,一般就労などの社会活動に従事している者のほうが,在宅で過ごす者よりも社会適応障害合計得点が高い傾向にあり,障害が顕在化していることが示された。そして特に「意思疎通の困難さ」において一般就労群のほうが在宅群よりも得点が高く,困難さが顕在化していることが示された。
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