高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム:古典症候の解体から新たな介入に向けて
「構文の処理」における側頭葉の関与と障害機序について
─特異的言語障害と分子生物学,損傷脳,機能画像知見からの科学的検証─
川崎 聡大
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2010 年 30 巻 2 号 p. 253-262

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抄録

近年の機能画像や認知神経心理学の進歩により Brodmann44,45 野が構文の処理に密接に関与していることは明らかである。今回,「構文処理」の障害について特異的言語障害と FOXP2 遺伝子変異の関連から,「構文処理」における側頭葉の関与については機能画像および損傷脳での知見とGarrett (1981) のプロセスモデルとの対応関係の二つの視点から検討を行った。その結果,「構文処理」の障害における形態素以前と,意味論以降で障害機序が異なる可能性を示唆した。後者では,構文処理のプロセスにおいて, 統語構造の生成や語彙の選択,文法的形態素の付与には Brodmann44,45 野が関与し,述語項構造については側頭葉が関与し「動詞の意味」を手がかりとして格の付与を行うことが示唆された。このことは,前方病変での文法障害症例への新たな訓練の視点を付与するものであると考えられた。

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© 2010 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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