高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム:古典症候の解体から新たな介入に向けて
記憶と情報統合能力
─記憶の一側面を評価する課題で困難を呈する症例─
吉村 貴子
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2010 年 30 巻 2 号 p. 277-284

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抄録
   ワーキングメモリ (WM) は,いろいろな認知活動の遂行に必要不可欠な一時的な記憶という,その「機能」に着目した概念である。WM には 2 つの従属システムである音韻ループと視空間スケッチパッドと,この 2 つの従属システムをコントロールする中心的な役割を担う中央実行系 (central executive) からなる。さらに,2 つの従属システムに加えて,長期記憶からの情報の検索に関するエピソディックバッファー (episodic buffer) (Baddeley 2000) .が提唱されている。WM を測定する課題には,さまざまな評価方法があるが,言語と空間などの異なった様式の情報を統合するバインディング課題 (binding task) (Prabhakaran ら2000) には,エピソディックバッファーが関与し (Baddeley 2000) ,特に機能的磁気共鳴画像 (fMRI) による研究から,右前頭葉が関わるとの報告もある。
   今回はバインディング課題をとりあげて,この課題における健常例や神経心理学的症例の反応結果から,記憶と情報統合能力に関する報告と考察を示した。
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© 2010 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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