高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
失語症に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS) の効果と回復過程における基底核の役割について
井上 雄吉荒木 一富西田 勇人藤田 明美藤本 万理青山 麗子
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2010 年 30 巻 4 号 p. 496-509

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抄録

表出障害が主体の失語症に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS) の効果について検討した。対象は左大脳半球の主に慢性期脳血管障害 20 例 (梗塞 12 例,出血 8 例,全例右利き) で,発症から rTMS 開始までが 68~2793 日 (平均 591.6 日) であった。rTMS は健側右半球の Broca 野相同部位の Brodmann 45 野に,運動閾値の 90 %の強度で,1Hz,900 発刺激を計 10 セッション行った。評価は表出面を中心に,40 個の絵の呼称や短縮版 WAB,標準失語症検査 (SLTA) で行い,rTMS 前後の局所脳血流量 (rCBF) も調べた。結果は,絵の呼称では脳梗塞例全体で rTMS 施行 2 週後から有意の改善を認め,効果は終了 4 週後も持続し,SLTA でも有意の改善を認めた。脳出血例では有意の変化はなかった。脳梗塞例では rTMS 後に左基底核 rCBF の有意の増加を認めた。健側半球の低頻度 rTMS は,特に左基底核が保たれた慢性期脳梗塞に有効であり,失語症の改善に左基底核の関与が示唆された。

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© 2010 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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