高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム II : 進行性失語をめぐる諸問題
意味性認知症における言語訓練の意義
一美 奈緒子橋本 衛小松 優子池田 学
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2012 年 32 巻 3 号 p. 417-425

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抄録

軽度意味性認知症 (SD) 患者 2 症例に対して失われた語彙の再獲得訓練を実施した。その結果, 訓練前に呼称できなかった語であっても訓練すれば一旦は呼称が可能となった。しかし, 長期効果については症例によって差があり, 呼称障害がより軽い症例ほど効果が長期間持続しやすいことが示された。語彙の再獲得訓練の長期効果が少ない症例では, 元々呼称が可能であった語であっても, 訓練を中止すれば経過とともに呼称能力は低下することが示された。すなわち, 軽度の SDであれば, 語彙の再獲得, 保たれている語の保持, いずれにおいても訓練を継続している限り, 一定の効果が得られることが示された。さらに, より効果的な訓練方法を検討した結果, 患者が日常的に使用している物品を訓練語として用いることで訓練がより効率的になることが示された。以上の結果から, SD に対する言語訓練は, 訓練効果が期待できる患者を選択し, 患者の日常生活に即した訓練方法と内容を考慮すれば一定の意義があると考えられた。

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© 2012 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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